ロック!?
文化祭にでる気はないが、慎吾の言葉が少し気になった。 「すごいギターって…誰だよ。」(浩紀) 学校が終わると俺はすぐに玄関へ向かった。 玄関へ向かう途中どこからか楽器の音が聞こえた、気になって音のするほうに行ってみた。 音がするのはどうやら実習室のようだ、この高校は工業高校でいくつかこういう教室がある。 それほど多くはないが人だかりができていた。 中をのぞくと翔たちのバンドが文化祭で演奏する曲を練習していた。 「やっぱバンドはかっこいいな!」 「なんだ、翔ドラムうまいじゃん!」 そんな声がちらほら耳に入ってくる。 「このバンドたいしたことないなぁ〜」 後ろのほうで誰かがそうつぶやいた。 見たことないやつだった、もしかしたら1年生かもしれない。 だがそのときはそいつのことは気にならなかった。 「あっ、浩紀!こっち来いよ」(翔) 俺はしぶしぶ実習室に入った。 「ちょっと浩紀もたたいてみろよ!」(翔) 俺はもちろん全くたたくきはなかった。 「いや、いいよ…」(浩紀) 「いいからいいから!ちょっとだけ、みんな!浩紀は俺のドラムの師匠だからドラムすっげぇ上手いんだよ!本格的にたたいてるところ見たことないけど」(翔) 言ってることが少し矛盾していたが何もつっこまなかった。 「そうなの?浩紀聞かせろよぉ」 「浩紀君のドラム聞きたいなぁ」 まわりに集まっていた生徒が口々に言った、人が多いせいか断れない雰囲気だった。 「分かったよ…少しな」(浩紀) 仕方なくドラムをたたくことにした。スティックを握りたたきはじめた、淡々とただドラムをたたいた、何も考えずにたたいた…考えごとをすると親父の顔が浮かんでくる、嫌いな親父の顔が…、やっぱりあいつの顔が浮かんできた、そのときにいつもドラムが嫌になってくる。 そのとき、スティックを落とした。だがスティックを落としてもまだ親父の顔が頭の中に残っていた。 急に教室が静まりかえる。 「なんか…微妙だなぁ、翔のほうが上手いんじゃん?」 そんな声が聞こえてきた。 「あれ?初めて聞いたけど…もしかして俺のほうが上手くなっちゃった!?」(翔) 翔は笑いながら言った。 いつもの俺ならそこで翔にキレていたかもしれないがそんな気にはなれなかった。
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