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ソメイヨシノ

[213]  セコイヤチョコレート  2008-01-27投稿
 夕食時、無口な父がいきなり「明日桜を見にいかないか?」と言った。私は「嫌だ」と答えた。母は無言だった。
昔よく家族で桜を見に行った。でも、いつから行かなくなったかは忘れた。
何故今になって、言い出したんだろう?父は仕事人間で日曜日も仕事をしていた。だから父との遊んだ記憶は何もない。唯一の思い出は桜を見た事だ。
秋になり父はいきなり会社を辞めた。しかし母は知っていたので、私は何も言わなかったし、聞きもしなかった。
会社を辞めた父は、母とよく旅行に出かけた。いわゆる第2の人生を母と楽しんでいるんだろう。と思っていた。
3月になり母が「今年こそは皆で桜を見ようね」と言い出した。私は「うーん」と、どうでもいい返事をした。
ある日、自宅に帰ると父が吐血し倒れていた。急いで病院に運んだが意識不明だった。父は癌だった。
1年前に桜を見に行こうと言ったのは、自分の余命が少ない事を知って言い出したのだ。
父の意識が戻り外出許可出た。20年ぶりに父と母と私3人で桜を見た。満開は過ぎていたが、とても綺麗だった。
しばらくし、父は天国へ旅立った。毎年あの場所で、ソメイヨシノを見ると父との思い出が蘇える。

感想

  • 8675: 抑揚を持たない淡々としたリズムの語りくちが、反って強い印象を残すことがあります。この作品は、その良い例ではないでしょうか。 亡き父の記憶。 ふと蘇るあの日の三人。 人は消えていくのに、思い出は残る。 心の奥をそっと揺らされた気がします。 繰り返し拝読させていただきました。ありがとうございました。 [2011-01-16]

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