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ララ [3]

[255]  ロミ  2006-04-16投稿
髪は淡いベージュ。
少しウェーブのかかったそれは3月の冷たい風になびいていた。

一目惚れだった。

大してかっこいい訳ではなかった。
けど、声が素敵。
眼差しが素敵。

三年間もいて気づかないなんて…

私は何も見ていなかったんだ…


私は友達の卒業記念カラオケを断って彼を追った。

彼は中庭の枝垂れ桜の下で草むしりをしていた。

花はもう無かったが、私はこの木が好きだ。


私は後ろから、コツコツとローファーをならしながら、近づいた。
こっそり行って彼が驚くといけないと思った。


「花、終わったんですね。」

彼は軍手の白い部分でひたいを拭って私を見た。

「…そうだね。」

無視されるかと思った…

「草むしり楽しいですか?」
「別に楽しいわけじゃないけど嫌いじゃないよ。」

少し笑って彼はいうのだ、心地よい、
そう思った。

「私は好きです。草むしり…なんか楽しいから。」

私は何気なさを装って隣に座り込んだ。

一番近くの草をつかみ、むしる。
雀がないて、風が吹いて、私のストレートの髪がなびく。


「卒業生?」

彼は隣に座った私に軍手を手渡しながらいった。

「本当は手伝ってもらっちゃだめなんだろうけど…あ、軍手使って…」

「ありがとうございます。でも、わたし軍手は使わないんです。触っていたい…変ですね。」

「そんなことないよ。俺も軍手はあんまり好きじゃないんだ、汗かくからね…」
「じゃあ、どうして軍手使ってるんですか?」

「寒いから…」

しばらくの無言の後、私たちは草で一杯のゴミ袋を見おろしていた。


「ありがとう。おかげでずいぶん早く終わった。」
「そんな…」


「あの…」

「何?」

袋の口を結びながら彼がいった。

「いえ……帰ります。さようなら。」

好きな人いますか…

聞けない…
バカ…
聞けないよ…

そのまま私は一度も振り返らずに走った。


嘘です。


三メートルほどでUターンをして彼の袖をつかんだ。
「好きな人いますか…」

聞いてしまった…

「え…」

困ってる…
困るよね…
いきなり知らない、たった一時間ほど一緒に草むしりした女が、
好きな人いますか…

ありえないよね…

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