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奈央と出会えたから。<64>

[772]  麻呂  2008-01-30投稿
* * * * * *

あたし達が辿り着いた場所はー


あの、いつもの公園だったー。


あたしが一人で来るのはいつも夕方だったからー


こんな真っ昼間に来たのは初めてだったー。


公園の中ではー


小さな子供連れのお母さん達が、子供同士を遊ばせていたー。


如何にも今日が公園デビューかな‥と思わせる、若いお母さんも居たー。


そんな微笑ましい親子が三組居るだけでー


質素な風景の公園に華やかさを与えていたー。


あたし達は公園の隅にある、木製のベンチに腰を掛けたー。

『‥‥くぅー。足痛ぇー。』


そう言って、北岡はあたしの方を見て笑ったー。


『あはは。あたしも‥。久々に思いっきり走ったから‥。』

あたしは、まだドキドキしていたー。


思いっきり走ったせいだけではなかったー。



『木下の泣き虫ぃ〜!!』


北岡は悪戯っぽくそう言うと、両手であたしの頬を挟み込んだー。


『う゛〜‥。北岡君‥‥。』


あたしの顔は、唇が尖ってて、アヒルみたいな顔になってたと思うー。



『‥‥涙のアト‥。』


北岡は親指で、優しくあたしの目尻を拭ってくれたー。


優しくされたのとー

安心したのとー


嬉しくなったのとー

少しの不安とー


色んな気持ちがミックスされて‥


あたしの涙腺がまた緩む‥‥。


ぐしゅっっ‥‥‥。


『ほら‥。また泣くぅ〜。木下の泣き虫は、どうやったら直るのかな?!』



次の瞬間ー



北岡の少し斜めに傾けた顔がー



涙でぐちょぐちょのあたしの顔に近づいたー。



北岡との初めてのキスはー



涙で少し、しょっぱかった‥‥。

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