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トラと呼ばれた猫1

[259]  ギンコ  2008-01-30投稿
トラと呼ばれた猫が居た。
ビルの隙間。ぐるぐると幾重にもガムテープが巻かれた箱の中で彼女は鳴いていたそうだ。

弟が拾ってきた茶トラの猫は、まだ小学生だった私達による必死の説得で我が家の一員となった。

命名「チャトラン」。

男勝りだった彼女は、見事な暴れっぷりと気性の粗さで、すぐに近所の女ボスとなり、いつしか家族は彼女を「トラ」と呼ぶようになった。
ケンカの声が聞こえると、短い尻尾をピン!と立ててやる気満々で外へ飛び出して行く!そんな彼女が大好きだった。

……時が過ぎ、あの日子供だった私達が社会人になった頃には、活発だったトラも落ち着きのあるお婆さん猫になっていた。

所々あった白髪が目立つようになり、高い場所に行かなくなった。また、寝ている姿を見かける事が多くなっていた。

その後、親元を離れた私は帰省すると真っ先にトラを撫でた。
「やっぱり猫はいいな〜」と執拗に撫でられ、彼女は迷惑していた事だろう。
帰り際、必ず「また来るから!まだまだ長生きしろよ!」と言葉をかけた。

…そしてあの夏の日…。

私は、大きな大きな過ちを犯してしまった。

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