怨滅シ屋―?:ウラメシヤ
金木犀の匂いがした
「ようこそ。柩ノ宮家へ。藤咲さん」
目の前の家主は藤咲に微笑んだ。白い着物には綺麗な桜が描かれている
辺りはもう真っ暗だった
灯が一つもない筈なのだが、回りにいる四人はなぜかはっきりと見える
「僕は…何なんですか…?」
藤咲はもう一度訊ねた
「立ち話もなんですし、御上がり下さい」
微笑みながら言う家主の後を藤咲は連いて行った
真っ白な髪を簪でとめた後ろ姿はまるで女だ。声を聞いても性別が判断できない。これでよく男だとわかったものだ
すると藤咲は四畳くらいの小さな和室に案内された。家主は正座で座り、藤咲は反対側に座った
「そうですね…。まず最初に、これから言うことは全て真実です。嘘偽りはありません」
藤咲は息を飲み、「はい」と答えた
「私たちは怨滅シ屋と言い、この世に害をなす妖怪どもを滅する為にいます。
妖怪どもは日本の高度経済成長期を境に激減したのですが、最近になって妖怪の数が一気に増えてきました。
…藤咲さん、これから恐ろしいことが起きようとしています。貴方の力が必要です。
無理にとは言いません。明後日迄に決断して下さい。
説明不足なのはわかっています。しかし、今の貴方に教えられるのはここまでです。
明後日の朝、門の前に来て貴方の決意を聞かせて下さい。
ただし、興味本意で来ないで下さい命がかかっています。途中で引き返すことは出来ません。
…最後に、此れは貴方の問題です。友達を頼らないで下さい。
貴方の友達を捲き込んだら取り返しのつかないことになるでしょう…」
「…わ、わかりました」
「では明後日の朝門の前で…」
家主が何かを唱えると藤咲は気を失った。
翌日、藤咲は制服のまま、ベッドの上にいた
制服にはほのかに金木犀の匂いがした
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