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奇跡(上)

[446]  にゃん子  2008-02-03投稿
待ちに待った週末にもかかわらず、急な呼び出しで時間外出勤…。憂鬱。

社内には、私を呼び出した上司と、私、それから… あの人!?

私より8歳年上で仕事のできる小野瀬さんだ。職場では、自分にも厳しく他人にも厳しい怖い存在。しかもとにかく口が悪い。そのルックスを除いたらただの鬼じゃないかと思う。数えるほどしかかかわったことはないが、鼻で笑われたことと嫌みを言われたことしかない。
なんで今日出勤してるんだ!?

おだやかな土曜日のはずが、一気にピンと糸がはられたような冷ややかな空気に変わった。
私は、小声であいさつをし、席につき息を潜めるようにして仕事にとりかかった。

おっと、一つ補足しておく。私は小野瀬さんが苦手だけど、嫌いではない。一度だけ、会社の桜が満開に咲いたとき、こっそり写メをとる小野瀬さんを見てしまった。
その日から、小野瀬さんへの恋がはじまった。分厚くて冷たい仮面の下のあったかい顔をもう一度見たい。

ガランとした社内には私と上司と小野瀬さんだけ。

と… 思ったら、上司は私にやるべきことのみ伝達して帰ってしまった。
お〜い!!!

社内は一層冷やかで、カタカタと二人のパソコンの音だけが響く…。

はじめての二人っきりの時間は、何も考えれないほどの緊張感をもたらす。 もちろん私の一人相撲。


次の瞬間、小野瀬さんが席を立った。コツコツと私の方へ近寄ってくる足音。

コツコツコツ

私はその足跡を掻き消すかのように夢中でタイピングを続けた。カタカタとその音に集中するよう努力した。。


…そして、その足音は私の横でとまった。私はデスクトップから視線を離すことができなかった。


「あのさぁ…」



彼が口を開いた。



私は体中に心臓があるかのように全身で血液の流れを感じていた。

私の視線はデスクトップからゆっくりと彼が立っているであろう方に移した。

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