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雪の日

[340]  わうめん  2008-02-04投稿
午前4時、外は不思議な静寂に包まれていた。
人の気配はなく、あるのは凍結した雪と、それを砕く自分の足音だけだ。
歩を進める度に凜とした寒さを感じる。上京して3年、故郷の冬を思い起こしたのはこれが初めてだ。
白銀に浮かぶ輝く星、何もかもが眠った静けさ、その世界を歩くのが好きだった。
そしてその記憶が甦る時きまってあの冬を思い出す、18歳のあの人と過ごした冬のことを。

僕達の宝はあの町の秘密の中にあり、その宝は誰にも見つからないように箱の中に入れて二人だけの場所にそっと隠しておいた。
錠は二つあり、鍵は互いに一つずつ、開ける時は二人でなければいけない。
僕は毎日のように一人で箱の前にたたずんでいた、あの人が来た時は、箱を開け宝に触れ、幸福で満たされたが、あの人はきまってすぐにさってしまう。閉ざされた箱の前でただ中身を想像して立ち尽くすのは、とても僕を孤独にさせた。
それでもあの人と宝に触れていられる一時を思えばいつまででもその場所にいられる気がした。

秘密は人に気付かれるから秘密であり、そうでないとしたら無でしかなく、宝箱はみな探すことをやめず、見つけたらその鍵まで見つけだし、宝を手垢で汚してしまう。

僕はきっとまた思い出すだろう、あの人と永遠に手に入らない宝のことを。

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