蒼白の悪魔(1)
春、桜が満開となった御池市(おいけ市)は都会よりも少し田舎に位置したとても自然の多い地域である。
その割に交通網は発達しており、朝のこの時間帯だと通勤ラッシュのため駅前はかなり混雑している。
その駅前を抜け、川沿いの道を下り、大きな鉄橋を超え、さらに少し住宅地を歩いた所に、御池市立池華高校(いけばな高校)がある。
中学三年生の時、一月の下旬に前期選抜で合格し、それ以来他の受験生が問題集と格闘しているような時間を、気楽に弄んでいた少年、藤岡優(ふじおかゆう)はこの高校に久し振りに足を踏み入れていた。
志望動機は冷暖房完備、携帯電話持ち込み可(授業中は電源を切る事を義務付けられる)、さらに徒歩十五分程度で通えるような距離に位置している事からだった。
もちろん面接の時はまともな志望動機を延々と語ったが、その九割方は作り話である。
外観も教室も体育館からトイレまで全てがキレイなのもこの高校の魅力で、二年ほど前に大規模な改装工事があってからは人気が急上昇し、それに乗せられてしまったのも受験した理由のひとつであった。
入学式のため、一度体育館に集合し、まだ歌詞すら覚えていない校歌を歌わされ、クラス割とその日の予定が書かれたプリントを受け取り、自分のクラスだと思われる教室へと足を踏み入れる。
自分の受験番号が書かれた紙が張られている席に座り、あたりを見回してみた。
(なんだかやけに賑やかだな)
優の座っている廊下側の一番後ろの席とは反対側の窓側最後尾の席に多くの男子生徒が密集していた。
そこは、優が前々から気になっていて、いつも目で追っていた少女、藍原咲(あいはらさき)の席である。
(そっか、あの子すごく可愛かったもんな)
そんな彼女の困り果てた表情から察するに、彼女が質問責めにあっている事など容易に想像できた。
今まで女性に惚れた事などなかった優でさえ一目で多少の好意を抱くほどの美少女である、こうならないハズがなかった。
何の面識もない自分が助け船を出せるわけもないので見守る事以外は何もできない。
そんな中。
「あなたも、彼女が気になるんですか?」
突然、背後から聞き慣れない声がした。
「ん?」
そこには初対面であろう見慣れない少年が立っていた。
その割に交通網は発達しており、朝のこの時間帯だと通勤ラッシュのため駅前はかなり混雑している。
その駅前を抜け、川沿いの道を下り、大きな鉄橋を超え、さらに少し住宅地を歩いた所に、御池市立池華高校(いけばな高校)がある。
中学三年生の時、一月の下旬に前期選抜で合格し、それ以来他の受験生が問題集と格闘しているような時間を、気楽に弄んでいた少年、藤岡優(ふじおかゆう)はこの高校に久し振りに足を踏み入れていた。
志望動機は冷暖房完備、携帯電話持ち込み可(授業中は電源を切る事を義務付けられる)、さらに徒歩十五分程度で通えるような距離に位置している事からだった。
もちろん面接の時はまともな志望動機を延々と語ったが、その九割方は作り話である。
外観も教室も体育館からトイレまで全てがキレイなのもこの高校の魅力で、二年ほど前に大規模な改装工事があってからは人気が急上昇し、それに乗せられてしまったのも受験した理由のひとつであった。
入学式のため、一度体育館に集合し、まだ歌詞すら覚えていない校歌を歌わされ、クラス割とその日の予定が書かれたプリントを受け取り、自分のクラスだと思われる教室へと足を踏み入れる。
自分の受験番号が書かれた紙が張られている席に座り、あたりを見回してみた。
(なんだかやけに賑やかだな)
優の座っている廊下側の一番後ろの席とは反対側の窓側最後尾の席に多くの男子生徒が密集していた。
そこは、優が前々から気になっていて、いつも目で追っていた少女、藍原咲(あいはらさき)の席である。
(そっか、あの子すごく可愛かったもんな)
そんな彼女の困り果てた表情から察するに、彼女が質問責めにあっている事など容易に想像できた。
今まで女性に惚れた事などなかった優でさえ一目で多少の好意を抱くほどの美少女である、こうならないハズがなかった。
何の面識もない自分が助け船を出せるわけもないので見守る事以外は何もできない。
そんな中。
「あなたも、彼女が気になるんですか?」
突然、背後から聞き慣れない声がした。
「ん?」
そこには初対面であろう見慣れない少年が立っていた。
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