彼の恋人
1月末、学年末試験が終わり、大学受験は臨戦体制を整える。
足早に帰宅する博文は外へ漏れる電子ピアノの調べにふと足を止める。真っ昼間にドビッシーの「月の光」である。克彦が定年後の暇潰しに電子ピアノを弾いているのではないかと思い、久し振りにみくの家に押し掛ける。
しかし、応対に出たのはみくだった。
「博文君は、今学校の試験が終わった所なの? 私のとこはセンターが終わってすぐ学年末試験があって、今週から自由登校なのよ。あと20分くらい経てばお父さんが戻って来るよ」
みくに促されるように家を通される。
「勉強の息抜きにピアノを弾いてたんだ。プロを目指す訳じゃないのに、なかなかの腕じゃん?」
「名波が本気を出すからつられちゃうのよねぇ」
博文にピアノの腕前を褒められたみくは、照れ臭い笑みを浮かべる。ペットボトルの烏龍茶を振る舞い、博文に勧めるみくは、センター試験直後の反省会に暁と一緒に押し掛けた事を気にしていないか、尋ねる。
「好きな人に振られた所で、俺達の集まりに邪魔してしまったのを根に持ってないかって? 全然気にしてないよ。普段から他校の奴等と普通に交流出来ない桜庭の奴等だから、俺達の輪に入れてやっただけだよ」
どうやら怒っていないようで、みくは安心した。
「私達に同情したかったのね。有り難う。ところで、センター試験の自己採点はどうでした?」
「8割以上取れてた。センターで出願できる大学に絞って、二次試験に集中するんだ」
「私も8割以上取れたわよ。桜庭の予備校禁止の受験対策は本物だって事が証明された訳ね。二次試験に集中したいから、滑り止めはセンターで出願できる所にする」
「そう言えばあの時、どういう大学を狙うか聞いてなかったな」
「お茶女で心理学を学びたいな。女の子しかいない青春を味わいたいから」
みくが臨と同じ大学を目指している事を知り、博文は考え込む。
「結局男に惑わされない生き方を望むのか。で、反省会の時一緒にいた奴はどうなんだ?」
「小林君の知り合いの話を聞いてて分からなかったの? 自分の思う通りにならなくて、貧乏籤を引かされてぐずぐずする奴だとは思わなかった。今度こそ本命に見放されたら、こっちから縁を切ってやる!」
足早に帰宅する博文は外へ漏れる電子ピアノの調べにふと足を止める。真っ昼間にドビッシーの「月の光」である。克彦が定年後の暇潰しに電子ピアノを弾いているのではないかと思い、久し振りにみくの家に押し掛ける。
しかし、応対に出たのはみくだった。
「博文君は、今学校の試験が終わった所なの? 私のとこはセンターが終わってすぐ学年末試験があって、今週から自由登校なのよ。あと20分くらい経てばお父さんが戻って来るよ」
みくに促されるように家を通される。
「勉強の息抜きにピアノを弾いてたんだ。プロを目指す訳じゃないのに、なかなかの腕じゃん?」
「名波が本気を出すからつられちゃうのよねぇ」
博文にピアノの腕前を褒められたみくは、照れ臭い笑みを浮かべる。ペットボトルの烏龍茶を振る舞い、博文に勧めるみくは、センター試験直後の反省会に暁と一緒に押し掛けた事を気にしていないか、尋ねる。
「好きな人に振られた所で、俺達の集まりに邪魔してしまったのを根に持ってないかって? 全然気にしてないよ。普段から他校の奴等と普通に交流出来ない桜庭の奴等だから、俺達の輪に入れてやっただけだよ」
どうやら怒っていないようで、みくは安心した。
「私達に同情したかったのね。有り難う。ところで、センター試験の自己採点はどうでした?」
「8割以上取れてた。センターで出願できる大学に絞って、二次試験に集中するんだ」
「私も8割以上取れたわよ。桜庭の予備校禁止の受験対策は本物だって事が証明された訳ね。二次試験に集中したいから、滑り止めはセンターで出願できる所にする」
「そう言えばあの時、どういう大学を狙うか聞いてなかったな」
「お茶女で心理学を学びたいな。女の子しかいない青春を味わいたいから」
みくが臨と同じ大学を目指している事を知り、博文は考え込む。
「結局男に惑わされない生き方を望むのか。で、反省会の時一緒にいた奴はどうなんだ?」
「小林君の知り合いの話を聞いてて分からなかったの? 自分の思う通りにならなくて、貧乏籤を引かされてぐずぐずする奴だとは思わなかった。今度こそ本命に見放されたら、こっちから縁を切ってやる!」
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