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航宙機動部隊前史・38

[530]  まっかつ  2008-02-11投稿
それでも宙際連合は滅びなかった。
それぞれの宙邦の思惑と利害とが、既に死に体の《人類宇宙唯一の政体》の存続へと働いたからだ。
言わば形だけの《朝廷》だった。

確かに宙邦群同士の際限無き競争が破局に至らない様に仲裁・調停する存在は必要であった。
その点、力を失った宙際連合は実に便利な道具ではあった。
更に、中央域文明圏と言う巨大なお荷物をどの宙邦も引き受けたがらなかった。
経済・人口規模ではそれは銀河最大の物量を誇っていたが、逆にその物量がネックとなっていたのだ。
後進的・封建的な数百億星民を丸抱えし、しかもその全員に自国民と同じ待遇・教育を与え、安全保障まで面倒見なければならない―どの宙邦にもそんな意思も余裕も無かった。
よって、中央域は半ば見捨てられ、銀河の最先進地帯の座からあっけなく転げ落ちた。
中央域が再び真の銀河の中心となるのは、これより数星紀を要さねばならなかった。

銀河元号一三00年代からを、歴史的には《戦邦時代》と呼ぶのが慣習となっている。
宙際連合と言う強大な軛を脱した各宙邦は、思い思いに富国強兵を進め、互いに激しく争った。
だが、どの国もやがて分厚い壁にぶち当たる事になる。
後に《文明の限界》と名付けられる一連の本質的制約が、彼等を自縄自縛に陥れたのだ。
何故なら宙邦群とは中央域文明圏と全く異質な文明―例えば航宙遊牧民の様に―な分けでは無かったからだ。
元々彼等は宙際連合の専横や監視体制に反抗して、遠宇宙に植民した人々の子孫だ。
望んだのは自由であって別の文明ではない。
よって、彼等に文明保守主義の倫理的・技術的タブーを犯す意図は―少なくとも航宙遊牧民と比べれば―無かった。
国力増進に必要なのはヒト(労働力)・モノ(資源)・カネ(貨幣)の三大要素の他に、領域・技術・それに信用と言った分野が必要だ。
宇宙に進出してから、その誕生以来悩ませ続けられて来た資源と領域の不足から人類はほぼ解放されていた。
どちらも宇宙には無尽蔵に有り、合成技術も極めて早いテンポで進歩していたからだ。

だが、技術分野では熾烈な競争が続いていたが、情報公開を原則とするネット集合体がいる限り、どの国も頭一つ飛び抜ける状況は許されず、直ぐ他者に模倣されて何時までも横並びが続くだけだった。

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