【熱の冷めないままに】


長時間に及んだ審議の結果、軍配は芦毛のアシュベルと将来有望な若手騎手・清家にあがった。俺とハウルは小差の２着。
…その後の久遠の落胆ぶりは、言うまでもなく大きなものだった。レースが終わる直前まで、勝つことを信じて疑わなかった、勝てるという自信を持って臨めたレースだった。しかし、２着でも、敗者は敗者なのだ。俺達が欲しいのは、尊い１勝なのだから。

だが、いつまでもへこんではいられない。南関東競馬のクラシック三冠は、あまり感覚が開かずに行われる。それは、アメリカのクラシック三冠ににている。短期決戦で、世代を代表するクラシック勝馬が決まる。
そして、次のレースこそ…。

『今度のレースこそ、お前と俺と、ここにいるみんなと、そしてハウルと、なんとしても獲りたいレースだよな』

『…東京ダービー…』

まさに、南関東所属の３歳馬の頂点を決する、一戦、東京ダービー。南関東牡馬クラシック二冠目であり、伝統と格式ある一戦でありながら、三冠目であるＪＤＤ(ジャパンダートダービー)の事実上トライアル戦という意味合いももつ、大事な一戦である。
ここを勝つことで、南関東の覇者となり、全国統一への挑戦という権利を得られる。それは、俺達にとって、とても大きな意味を持つ。

『この短期間で、ハウルの成長曲線をどれだけ突き上げられるかがカギだな…どぉすっか…』

うーん、と久遠がうなる。

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