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愛しいひと

[292]  もね  2008-02-16投稿
あの人は小さい私に
訛のある優しい言葉で
不器用に頭を撫でた
私は小さな恋人みたいに
どこにでも遊びに行った
あの人の私を見る目は
どこまでも優しかった
でもある日あの人は
寂しそうな目をして微笑んだ
不思議な程おどけて見せた
それがあの人を見た
最後の日だった
なぜ私は子供だったの
なぜ助けてあげられなかったの
なぜ独りで行ってしまったの
どうして孤独だなんて
思ってしまったの

あれから随分時が経って
あなたを好きになった
何も気付かなかったけど
今思い出したの
あなたの目はあの人に似ている
いじけて怒った目
愛しく私を見つめてくれる目
そして時々
寂しい目をする
あなたも私に
訛のある優しい言葉で
不器用に語りかける
失ってしまいそうで
時々怖くなる
あなたがつらい時
私が救いたい
私はあの日の
幼子じゃない
何も言わずに
私を残して行かないで
ぎゅっとあなたに掴まる
あなたが消えてしまわぬ様に


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