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睡蓮の花が咲く頃に… ―拓の死?―

[276]  椿  2006-04-22投稿
今年も、睡蓮の花が咲く季節となった。わたしはこの季節になると拓のことを思い出す。『拓』それはわたしの大好きな人でした。 ―拓の死― 「拓、たくーっ、拓どこ?」病院は真っ暗で小さな蛍光灯が三つ、四つあるぐらいだった。美緒(みお)は泣きながら病院の長い廊下を走り続けた。ようやく売店の奥に何人かの人影が見えた。それは紛れもなく拓の両親と大学生の兄だった。「おばさん拓はどこにいるの?」美緒は頬に涙を伝わせながらやっとのおもいで尋ねた。すると、「美緒ちゃん、拓也に会いに来てくれたのね。」と言った。美緒はその言葉の意味が分からなかった。何も分からないままドアの上を見上げた。次の瞬間、美緒は急いでそのドアを開けた。ドアの上に書いてあった文字、それは『霊暗室』の三文字だった。「拓、嫌っ、イヤ―――。」その叫び声を聞いた拓也の母は泣き出してしまった。拓也の父は泣き崩れる弘美(ひろみ)を慰めることしかできない自分の不甲斐なさ、そして息子を失った悲しみで目に涙を浮かべた。

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