あの日あの時?
私と圭子はピアノ科、直也はチェロ科、浩介はクラリネット科。音楽大学は様々な楽器の専攻がある。
私は幼い頃から、ピアノしか知らない生活だったこともあり、学内で見かける色々な楽器や、聞こえてくる音色の種類の多さに驚き、感激していた。これが音大なんだよね…。
直也と浩介とは、いくつかの講義で一緒になった。圭子とは相変わらずくっついて座り、大教室の時などは雑談に興じたりした。
本当は直也のそばに座りたい。一緒に授業を受けられたら…と、私はいつもそれを望み空想して、ちょっとにやついて圭子ににらまれていた。
「絵里」圭子が私をちょっと上目使いに見て言った。何か真剣に話そうとするときの、彼女の癖だ。
「なに?」質問の内容は、何となく想像がついていた。私は学食の自販機のカップを取り出しながら答えた。
「北村君のこと、好きでしょ。」
「あぁ…うん。」
圭子に隠すつもりはない。
「やっぱねぇ。そうだと思ったよ。でも、北村君モテそう。」
「彼女いるかな。」
「高校時代からのがいるかもねぇ。」
そうかもしれない。いや、そうだろうな。知りたい。でも知りたくない…。
言葉に出したことで、私は自分の気持ちが本当だと、改めて知るのだ。それまで心の中だけで浮遊していた直也への想いが、現実になった。
いつも直也を探していた。どこにいても、何をしていても彼を探した。
そして私の目は、必ず直也を見つけ出すのだ。どんなに遠い場所でも。どんなにたくさんの人の中からでも。
私は幼い頃から、ピアノしか知らない生活だったこともあり、学内で見かける色々な楽器や、聞こえてくる音色の種類の多さに驚き、感激していた。これが音大なんだよね…。
直也と浩介とは、いくつかの講義で一緒になった。圭子とは相変わらずくっついて座り、大教室の時などは雑談に興じたりした。
本当は直也のそばに座りたい。一緒に授業を受けられたら…と、私はいつもそれを望み空想して、ちょっとにやついて圭子ににらまれていた。
「絵里」圭子が私をちょっと上目使いに見て言った。何か真剣に話そうとするときの、彼女の癖だ。
「なに?」質問の内容は、何となく想像がついていた。私は学食の自販機のカップを取り出しながら答えた。
「北村君のこと、好きでしょ。」
「あぁ…うん。」
圭子に隠すつもりはない。
「やっぱねぇ。そうだと思ったよ。でも、北村君モテそう。」
「彼女いるかな。」
「高校時代からのがいるかもねぇ。」
そうかもしれない。いや、そうだろうな。知りたい。でも知りたくない…。
言葉に出したことで、私は自分の気持ちが本当だと、改めて知るのだ。それまで心の中だけで浮遊していた直也への想いが、現実になった。
いつも直也を探していた。どこにいても、何をしていても彼を探した。
そして私の目は、必ず直也を見つけ出すのだ。どんなに遠い場所でも。どんなにたくさんの人の中からでも。
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