愛しているモノ。
「美波は俺のこと、愛してる?」
私の上で春彦は突然言い出した。
その一言で,高ぶっていたモノが,波が引くようにすぅ…と小さくなってゆく。
愛してる?
私は春彦のこと,愛してるの?
付き合って2ヶ月。
私たちが会ってすることと言えばセックスだった。
高校が終わればすぐに私が住んでいるマンションに一緒に帰り,そして親が居ない間に肌を重ねる。
デートにも行かないし,そんなにメールもしない。
友達に言ったら不思議がるけれど,私は本当に彼を愛している。
彼のカラダを愛している。
「愛してるよ」
「本当に?」
彼のしなやかな指が私の中に入ってきて,ぴちゃぴちゃと濡れた音をたてる。
その都度,カラダ中から汗が吹き上がり,背骨は重力に逆らって大きくのけぞる。
「愛してる…ものっ!!」
静かな部屋に,ベッドが軋む鋭い音が耳をつんざく。
「痛めつけられても?」
突如,私の中で激しく動き出す指。
鋭利な爪は私の中の至る所を傷つける。
「イタイ!!止めて!」
私がどんなに叫ぼうが彼の指は止まらない。それどころか益々スピードを増し,今や機械的な動きでせっせと上下運動を繰り返す。
「止めて!!」
私はカラダを起こして,彼の指を強引に抜いた。視界に色鮮やかなものが映る。
彼の指に,べっとりと赤い血がついていた。
それは透明な液とほどよく混ざり,まるでチョコレートのように甘くぬめっていた。
それを確認した春彦が,舌を出してその指を舐る。
骨がない軟体動物のようなそれは,右に左に器用に舐めまわし,指についた赤い色を絡めとってゆく。
ねぇ,それは一体どんな味がするの?
私は彼の指に顔を近寄せ,同じように舐めてみる。
鉄臭い味がした。
それと,獣臭い臭いもした。
発情期の猫と同じだ,
幼い頃みた,猫の交尾がふと白昼夢のように現れる。
互いに欲しあい,互いに欲を満たしてゆく。
尾を絡め,甘い声で鳴き,繋がる──
どんなに痛めつけられても,あなたを愛してる。
「愛してるわ……」
甘い声で私をとろけさせ,そして私の欲を満たしてくれる,
あなたのカラダを愛しているわ──…。
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