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太陽の涙

[140]  2008-03-02投稿
ミーン、ミーン…。
蝉は鳴く。
鳴いて、鳴いて、その後は死んじゃうなんて悲しすぎる。
なのに、そんな夏は不思議と嫌いじゃない。
夏の朝の匂い。あたしが好きな匂いだ。
「はーぁ。遅いなぁ〜。」
木陰で頬杖をつきながらあの人を待つ。
「あ、来た!」
向こうで手を振っている。
「ちとせ〜!こっち来て〜!」
しかたないから走って行く。
「どしたの翔助?」
「ん、プレゼント。誕生日、八月だったから。」
「でもまだまだだよ?最後の方だし。」
翔助は笑った。
「時代の最先端を進んでるの!俺は!」
「えー!?でも、ありがとう翔助。」
「どーいたしまして、ちとせちゃん!」
その後少し話して翔助は、早く帰らないといけないらしく、帰っていった。
誕生日までの二週間、あたしはぎっしりのスケジュールや家の手伝いで忙しくて翔助に会うヒマさえなかった。
「久々にメールしてみようかな?」
元気?それだけを、ただ送信した。
だけど、返事は来なかった。
翔助も忙しいんだろう、と思っていた。
そして夏休みが終わり、始業式でのことだった。
「皆さん、北波翔助君が…、亡くなりました。夏休みの間、ずっと病院にいたそうです。葬儀は…」
え?
嘘だと思った。元気だったのに。
プレゼントくれたじゃん。
でも嘘でもなく、ちょっとしたびっくりでもなく、本当のことのようだ。先生も泣いている。なんて言ってるか聞き取れないくらいに泣いている。
九月にはいりたての今日は、夏の太陽が泣いていた。
泣くことに夢中で、季節の交代を忘れてたのかな?
ミーン、ミーン…。
蝉も鳴いている。
お前達も、泣いているの?
大好きな人がいなくなって泣いているの?それとも、もうすぐ別の世界に行ってしまうから、この世界に別れを叫んでいるの?
あぁ。夏が終わっちゃった。
どうして気付けなかったんだろう。
さよなら、翔助。
ごめんね、翔助。
たくさんの想いであふれた。
あたしの頬を涙がつたった。
いつの間にか、蝉の声は止んでいた。

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