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25時から始まる

[531]  ゆうこ  2008-03-05投稿
私が死んだら泣いてくれますか?

里沙からメールが来たのは、深夜の25時。

里沙は、どちらかといえば地味な少女だった。
中学一年の時に、初めて声をかけられたのだ。

万里子さんですよね?
私と、お友達になってもらえないですか?
実際、妙な子だと思った…敬語だし。
陰気な黒髪と対象的な、熱に浮されたような憧れを秘めた両目。
私は頷いていた。そうするより仕方ないような強い「押し」が、彼女にはあった。

里沙は、それから私の後をついてまわる犬になった。

万里ちゃん、素敵ね。
万里ちゃんて、本当優しいのね…。

そんな雨のように降り注ぐ言葉に、私はうんざりしていた。

私は里沙の他に沢山の友達がいた。
けど里沙には私しかいなかった。もちろん私以外と話したりはするし、付き合いだってあった。
けど全力で愛されていたのは私だけだ。

愛されて…。

そう。私は、里沙に愛されていたのだ。
それは異性に対する愛のようでもあり、子供が母親に求める愛のようでもあった。

里沙。

私は携帯に照らし出された一文を指でなぞった。
ある日、里沙には家族がいないことを知った。
彼女は遠慮がちに笑って言った。

私には大切なものが一つしかないの。
万里ちゃんしかいないの…。

私は爪先から頭のてっぺんまで震えが走った。
私は、その日から全力で逃げた。

大勢の友達の前で、彼女を無視した。

彼女の垢抜けない容姿を笑い蔑んだ。

私は嫌われたかった。
里沙の重さを脱ぎ捨て、楽しく過ごしたかった。
里沙は微笑んでいた。
私に笑われても、人に蔑まれても。

それからクラスが変わり…私は里沙を無視し続けた。

そして卒業の日。

一通の手紙…パステルブルーの紙が机に置いてあった。

万里ちゃんへ

ねえ、万里ちゃん。
私、本当は万里ちゃんと会ったの、ずっとずっと前なんだよ。

私のお父さんとお母さんが事故で死んだ病院で、私、万里ちゃんに出会ったの。

大人だらけの病室を抜け出して、ロビーで泣いていた私に、万里ちゃんは言ったよ。

どうして泣いてるの?
私、万里子っていうの。ねぇ、泣かないで。
万里子、怖いことから守ってあげるよ

その日から私、万里ちゃんが誰より大切になったの。
ごめんね…万里ちゃん。さよなら。

里沙。

あれから三年が経って、変えなかったアドレスに入ったメール。

私は、文字を…打った。
会いにおいで…

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