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想像の看守 ?

[383]  ユウ  2008-03-08投稿
ルリは、あの少年には傷ついてほしくなかった。
少年の前に立ち、彼の目をのぞきこんだ時。冷たさの中にほのかに温かいものを持った、少年の人間性がかいま見えた瞬間、思ったのだ。キンの言う通りかもしれない。あの少年はもしかしたら、本当に「彼」の――。
「うおおおおっ!!」
少年の叫び声で、ルリは現実に引き戻された。
ルリを見下ろす狂った男の背後に、白い長いものを振り上げた少年の姿が、闇の中にぱっと浮かび上がった。
少年は重そうなそれを、思いきり男の背中に叩きつけた。
「がふっ!?」
男は白目をむくと、どさりと倒れてルリに覆い被さった。男の体の下から抜け出そうともがくルリの腕を引いたのは少年だった。
「……大丈夫か?」
「え、ええ……」
ルリは少年に助けられて何とか立ち上がった。圧迫された喉と蹴られた腹が、ズキズキと痛む。ルリは顔をしかめながらも、少年の肩を借りて、よろよろと男から離れた。
少年が床に放り出した白いものを見ると、それはあの石膏でできた大木の一本の枝だった。どうやって折ったのだろう。何にせよ……。ルリは喜びを噛み殺そうとして必死に顔をしかめた。少年は逃げなかった。わざわざ自分を助けるためにここに踏みとどまってくれた。
……そう、まるで「彼」のように。
そのことがたまらなく嬉しくて、まだ脅威が去ったわけではないのに、ルリは絶対にしてはいけない油断を、してしまった。
「早く逃げ……」
言いかけた少年が口をつぐんだ。目を見開いて、上の方を凝視している。
はっと顔を上げると、蔓のようなものが幾万本も絡み合った気持ちの悪い生き物が、ばあっと横に広がってルリたちを呑み込もうとしている所だった。
(しまった……!)
腰に差してあるはずのスティックがない。銀色の棒は数メートル先の床で、その半身に月光を浴びてきらきらと輝いている。ルリたちのような存在にとって最大かつ唯一の武器。真っ先に取りに行かねばならないはずだったのに……!
蔓の中に埋もれるようにして光る赤い目が、憎しみと憎悪に燃えている。異形の化け物は、射すくめられられたように動けない二人に、凄まじい速さで襲いかかった。
その時だった。
何かの生き物がくるくると宙を舞って飛んでくると、化け物に体当たりを食らわせて横に吹っ飛んだ。
それは金色の毛並みをした、美しい一匹の狐だった。

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