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古い写真5

[447]  瓠月  2008-03-09投稿
母親は、声にならない叫びをあげた。


血管が止まりそうなくらい真剣ににぎりしめる女の子の両手は、物理的な声をあらわしていた。

しかし、母親は右手に掴んでいる封筒を左手で素早く取ると、周一にそれを投げた。


『神社へ早く行って!』


母親の覚悟が伝わったのか、周一は迷わず神社の方へ走っていった。




母親と写真の二人が残されたそこに、警備の人が自転車の明かりをチラホラさせて近づいて来た。
それに気付いた二人は、手を繋いでスゥ…っと、消えた。


一人暗闇に残された母親は、痛そうに右腕をさすっていた。

『大丈夫ですか!?』


自転車の明かりに照らされた母親は、警備の人をじっと見ていた。







周一は前方で激しく揺れる懐中電灯の明かりを頼りに、神社へ走っていた。

『…あった!鳥居!』


神社の入口とも言えそうな鳥居の下をくぐり、ようやく神社へ着いた。


『神主さん!神主さん!』

切らした息で叫ぶが、一向に神主が出てくる気配はない。


『(…母さん)』

肩を撫で下ろし、手に持った封筒を見つめた。


背後からザッザッと砂を踏む音がしている。


『……』

周一は地面を殴った。

背後の足音が一番大きくなった所で消えた。


『…』

あの二人だ、と。ゆっくり立ち上がる。


『…うっ……!』

立ち上がり振り向こうとした時、小さい白い手が周一の首に伸びた。

力無く、反射のように首元へいこうとする周一の腕は、大切に持っていた封筒を砂の上に落とした。

真っ黒な顔が、周一の首を締めている。
落ちた封筒を目を下にして見ると、男の子が取ろうと腕を伸ばしていた。

『や……めろ…!!』


しかし、白い手がギリギリと首を締めている。


何でだろう、何でたった写真一枚でこんな思いをしなくちゃいけないんだよと、周一は最後に考えていた。

<…!>


『…ゲホッ……ゲホッ』

急に首を締めていた力が無くなった。

霞む目で何がどうなったのかと振り向くと、あの男の子と女の子が苦しそうにしていた。



そして、こちらに黒い眼差しを向けながら消えていった。

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