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少女と麒麟と青い空 4

[610]  ゆうこ  2008-03-10投稿
30分くらい歩き続けて少しお腹がすいたな、なんて思った時にキリンは止まった。

「着いたよ、トリさん」
眼の前にそびえ立つ立派なマンション。
赤い煉瓦のような外観はどっしりしていて、なかなか豪華。
…確かにぱっと見ただけでも15階以上はありそうだ。

人が通り抜けるのに便乗してすかさず門を抜ける…オートロックの意味のなさを考える時ではないながらも、複雑だった。
「ねぇキリン…さん。どうしてここなの?」

二人きりのエレベーターで…誰に聞かれるわけでもないのに小声になる。
「まあ、着きゃわかる」
ふーん…。
それにしても私、いつの間にか敬語辞めてる。
…だからどうって事ないけど。

躊躇わず1番上の階で降り(なんと23階!)
早足で歩くキリンに追い付く。

「ここ登るよ」

1番端の行き止まりの上を見上げると、屋上に繋がるマンホールがあった…高い位置からしかない梯子を、キリンは軽々登る。重たいマンホールの蓋を開けたキリンが、私に手を差し延べる…これで二回目。

苦労して、ようやく屋上に着いた。

学校と違って、フェンスも何もない。

以外と汚い屋上の縁には鳩がたくさん止まって、不審な侵入者を気にしていた。



気持ちいい?



伸びをして、容赦なく吹き付ける風にむせた。
凄い。
体ごと風に持って行かれそうだ。

ここからちっぽけな学校が見える。
学校どころか、遠くにある山が見える…澄み切った空より青い。

「いいでしょ?」

「うん…素晴らしい」

キリンは微笑んだ。
私も微笑みを返した。

世界はみんな私たちの下にあった。
凍える体も、乱れた髪も気にならない。

「じゃあ、サヨナラ。トリさん」


…え?


私は眼をしばたたき、キリンを見つめた。

「さっき言ったでしょ?僕は人の死ぬとこ見たくないの。だからここまでね。」

そうだった。
確かにそう言っていた。でも…。

「…最後まで…」

「え?」

突風に声が飛ばされる。私は大声で叫んだ!

「最後までいてよ!」

なんで?
なんで私、キリンにいて欲しいの?

わからないけど、キリンに側にいて欲しい!




「なんで?」



それは私たちの唇から、同時に零れた。




「一人が嫌だからよ!」



そうか。簡単じゃない。


キリンが近づいてくる。



「君は僕みたいだ」



私は真正面からキリンの両目を見た。


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