散ったとしても。
確に、翔はかっこいいとか可愛い部類に入るよ。けど、好きとか、恋愛感情を持ったことは昔も今も変わらず…無い。
たまーに、翔のふわふわした髪に触れてみたいな、とか。目大きいな、とか思う程度。
トキメキは…無い。
『好きな男でも居んの?』
結構まえに、二人で帰ってる途中聞かれた。(何故かは知らなかったけど)
『いないよ』と、即答した。
これが翔に言った初めての嘘。
本当は、いつだって想う人が居る。
抱き締めてほしい人が居る。
…なんて、言えるわけないけど。
「溜息ばっかー、今時のブーム?」
呆れたように溜息を漏らしたわたしに言いよってきた。
「ブームになるかもね、あんたが存在する限り。」
「それって誉め言葉?」
「そう聞こえるならアンタは最高の幸せ者よ」
あんまり他クラスの女子がチラチラ見にくるものだから、鞄を持ち直し翔に背を向けて全力で走った。
「あっ!一緒に帰ろうってば!!」
「嫌!!!」
廊下には、翔がたたずんでいた。
人混みに紛れて
「………こんなに想ってるのに」
ぽつり、と呟かれた言葉は誰に聞かれることもなく騒音に消えた。
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