Mind Adventure 7
水泡が動く音に混じって、甲高い金属を引っ掻くような音が響く。
『待って………』
後ろから、聞き慣れた【声】が追ってくるのがわかる。
止まるわけには、いかない。少しでも、遠くへ。
少しでも、あなたを、留めておく。
『待ちなさい……っ!』
頭に直接響くような声に、焦りが滲んだ。恐らく、少女に気付いたのだろう。
海の色が深さを増す。
どれほど深く潜ったのだろう。
人間のこの娘にどこまで耐えられるのだろう。
水を飲まないように、口と鼻を覆ってやってはいるが、それもどこまでもつだろう。
人間は、脆い。
心も、体も。
異端を退けて、臭い物に蓋をして――
自分の周りだけが助かって、あぁ、今日も無事だったって
きっと、そう思うんだ。
認めない。私達が何をしたというの。
私達に何が出来るというの……
そう認めない。そうすれば、護ることができる。そのためなら――――
決して厭わない。
『待って!待ちなさい!!』
呼び声はどんどん大きくなる。
だから私は、最後だと分かっていながら、応える。
私達の道は、離れすぎてしまった。
『お願い……帰って来てよ………』
『姉様………っ』
もう、あなたには届かない。
腕が掴まれる。
幼い頃から一緒に育ってきた、見慣れた義理の姉の顔。あなたと私が違うと気付いたのは、いつだったろう。
鮮やかだった空色の髪は、歳を追う毎に漆の色に近付いて。
ついには、私達と同じ姿を保つ為には、薬が必要になった。
そのあなたが、私を見て、やっぱり少しだけ迷った顔をする。
だけれど、それも一瞬。
悲しげに、淋しげに、瞳を固く閉じて首を振った。
もう光の加減で、昔の碧に見えたりするのも『懐かしむ必要さえない記憶』に変わる。
その為に
諦めるわけにはいかない。
私にもう迷う時間はない。
金髪の少女の細い首に、ゆっくりと爪を立てる。
『帰って来てくれないなら、この娘――』
お願い お願いだから
『殺すわ』
誰か、助けて
感想
- 9312: 作者、籬です。読んでくださっている皆様、ありがとうございます&まことに申し訳ありませんでした。投稿の順番を間違えました………m(__)m ここまで、暗い内容が続いておりますね。読者の皆様には非常に入りづらい内容だったと思います。 それでも続けて読んでくれている方々、改めてありがとうございます。長年温めてきた作品とはいえ、編集部分も大きく、自分でも拙いな、と思う部分が多くあります。 お手数と思いますが、「こうしたらいいんじゃないかな」「ここが嫌だな」と思う部分があったら、一言お願いします。 私はこの作品に誇りを持っておはります。 少しでも沢山の人に読んでもらえるように、心に何かを与えられるように、何卒ご協力お願いします。 [2011-01-16]
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