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生きるものたちの物語

[446]  しじゅう  2008-03-25投稿

サカグチが亡くなって一週間。


誰もいなくなった部屋。


時間などいらない。

暦もいらない。

ただ日が昇っては沈んでその日が終わる。



私にとって、あの人のいないこの世界はあまりにも切ない。



今日も静かに時は流れるだけの一日。







アンドロイド。


私はそう呼ばれている。


人のいうことを忠実に聞く人形。

否定はしない。


だけど人の心がある。

喜び、悲しみ、他者への愛情。

それが私にはある。



あの人が私に残した遺言。
私が壊れない限り、風化することはない。


この言葉を守ることが今の私の使命。


―――――そしてもう一つ。



「クレン、クレンはいるかい?」


私を呼ぶ声。


「なんですか?エジ」


私は声で人を的確に識別できる。


呼び主に答える。


「そろそろ痛み止めの薬が切れるんだよ、また取りに行ってはくれないかい?」

「はい」


音もなく立ち上がり、主人のにおいの残る部屋をあとにした。

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