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奇跡の朝に

[170]  Jun.k  2008-03-27投稿
もしあなたが雨の降る日に傘を持って迎えにきてくれれば私はぬれずにすむだろう。

ぼんやりと窓の外に目をやる。私は人を見るのが好き。だから本を片手によくこのカフェにくる。

ここの大きなガラスの窓が二階に“自分の居場所”を持っている私には最適な場所だ。二階席はごくわずかな人数しか座れず私はこの場所をとるためにオープン前から店の前にいる。
まだメニュー看板も出ていないこの店の朝は何故か私を特別な世界へと案内してくれているような気がする。

オープン二分前。彼がメニュー看板をもって店からでてきた。ごく限られた時間にかわす会話。
『おはようございます!二階席はまだ空席です!』
『だって1番のりだもの』



本当はもっと明るく、可愛く、素直に話したいのに、またもう一人の私があらわれる。家では何回もシュミレーションしたし友達にも何回も付き合ってもらったのにソレができない。

私はあの人を忘れるために このカフェの彼を“好きだ”と思い込んでいるならばまだあの人は私の中に生きているのであって、もし彼に対するこの感情が思い込みではなく、願ってのことならば私は自分の殻をやぶってどんどんつきすすみたい。

きっと女の子なら一回は経験する感情の波なのだけれど、私みたいにもう何年もこんな感じの人間っているのだろうか。私のために、どんなに綺麗な海に連れていってくれたって、どんな高価な物をくれたって、私にはいつもあの人との思い出が前提にあってそれに打ち勝つことも打ち消すこともできない。

あの人に連れていってもらった西宮ヨットハーバーの海は お世辞にも沖縄の海や日本各地の有名な海に比べれば綺麗とは言い難い。

でもそんな海でさえ私の心の中では世界一で、きっとこうして彼にこのカフェの二階に案内されている今もどこかであの人と行ったあの海を考えたくて誰にも邪魔されないこの場所で、私の大好きな“人を見ること”と一緒に重ねて見ていたいのだとおもう。

こんなことを想う毎日の朝に、彼は帰りに傘をくれた。

『あなたの心に雨が降った時に、この傘であなたを守りたい。』

彼はどうやら私の心の中にあるこの気持ちを“思い出”にかえてくれそうだ。

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