携帯小説!(PC版)

沈丁花

[293]  もね  2008-03-28投稿
疲れて歩く街角ふと足を止めた
生け垣のどこからか濃密で青い香りが漂う

夢中で花を潰した幼い記憶
擦れば何故か青さが増して掴みたい香りは消えていった

春の庭友達と生け垣に隠れて花を摘み
香水代わりにお互いの髪に差した

馥郁とした香りは私を包みながら掴めないもどかしさがあった

長い時間の中私は大人になりその地を離れた
そして今誰も知らぬ地にいる

それでもこの街角にあの日と同じ香りが流れている

あの日の思い出に鮮やかに色を挿した
私はいつからこの早春の香りを忘れていたのだろうか


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