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彼の恋人

[118]  高橋晶子  2008-03-31投稿
3月、桜庭学園は89人の卒業生を送り出した。この時になって、桜庭の有り難さに初めて気付く生徒が現れる。野暮ったい制服を通じて精神力を鍛え、恋愛禁止の青春は恋愛に年齢は関係ない事を学ばせたのだから。しかし、最後の最後まで皮肉をぶちまける者がいる。
「ふー。これでこの可愛げのない制服とおさらば出来るよ。先生はみんな親身だったけど、保守的な価値観に囚われてるから尊敬したり感謝する義理はないわね!」
「泉ちゃん、やめてよ。国公立受けた人は気が休まらないの。合格発表の前なんだから」
「そっか。センターで出願した私大に受かっても安心出来ないんだったね。暁ちゃん、結局後期で東北受けるそうだし」
「そうなんだよ。東北一本に絞るのは危険だって、母が東工大第1類を前期で受けろと……」
暁は大学を受けても貧乏籤を引く男である。惇は同情するどころか追い討ちをかける。
「就職してまで貧乏籤を引くの?」

博文達は志望校に受かったのか気になってきた。大学に受かったらこの田舎町を離れる事になるが、その先でまた一緒になれるとは限らない。

教師等に囲まれた年配の男に視線を合わせる生徒が目に付く。スーツを身に纏った克彦だ。かつての同僚と気兼ねなく談笑しているが、この日の克彦は卒業生の父兄として久し振りに桜庭に足を運んだのだ。
「数年後にはウチの卒業生同士が偶然再会して恋愛に目覚めるといいですねぇ」
「それ毎年言ってませんか? 僕の娘はずっと規子さんの言いなりだったけど、進路を巡って規子さんに泣かされた途端に『男に頼らない人生を歩みたい』って言い出すものだから、それから規子さんの言う事に殆ど耳を貸さない」
「規子……青山かぁ。恩師と結婚したって言う卒業生の話は聞かなくなったねぇ」
卒業しても桜庭に縛られる必要はなくなった事を嘆く教師等を心底軽蔑したくなった。
「そういう人程、余所で相手を見つけるもんだよ!」
泉の一言に心を救われた。これで桜庭と縁を切れると気持ちを切り替え、3年通った学舎を去る。

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