こころ
僕は泣いていた。
毎日。毎日。
毛布に包まって、枕に顔を埋めて。
声なき泣き声を、月明かりに満ちたこの小さな部屋に響かせて。
もう自分では止められなかった。自然と涙が溢れ出してくる。
何故、僕は泣いているのだろう。
誰か助けて。
あの時の僕はまだ高校生だった。
ちょうど2年生の終わりで、周りの雰囲気が一気に受験モードになった頃だ。
友達がライバルに変わって。テストは競争になり。勉強が嫌いな僕には苦痛だった。
だから、きっと苛立っていたんだ。
そんな時に来るあいつが悪い。
あいつは最近、毎日のように家に来ていた。学校から帰ると案の定あいつがいた。電気もテレビも付けずにリビングで座っている。
僕の姿を見つけると、にぃっと笑った。
「お帰りなさい」
ガラス玉のような瞳には光は映っていない。もうその目で、この世界を、現実を見ることはないのだろう。
その様はまさしく、ホラー映画のワンシーンだ。只只、恐ろしく、只只、悍ましかった。
そう、まるで実の母親とは思えない程に。
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