リミット THREE 壱
大橋 リノは深いため息をついていた。
頬杖をついて、抜けるような青空を見上げながらもう一度ため息。
やんなっちゃうよ…何もかも。
肩まで伸ばした黒髪が、教室に入り込んできた春風に煽られる。
窓際に咲いている桜が、リノを慰めるように花びらを届けた。
それをそっとつまんで、フッと吹き上げる。
乙女の感傷。
自虐的な台詞を吐いて苦笑い。
今は春休み。本来なら中学校に用はない。
が、リノは来た。
それは、リノが二年生の首席であり、次期生徒会長であるからだ。
この中学では「首席」は自動的に「生徒会長」
に任命される決まりだ。
リノにとって全くいい迷惑であり、頭の痛い事でもある。
「作文できたか?」
教室の扉が唐突に開き、リノは慌てて背筋を伸ばした。
「山口先生か…びっくりしました。あのー…順調…です」
正直、新入生を迎える際に読み上げる原稿は遅々として進まない。
これから体験するであろう灰色の学園生活に、心からおめでとうといいたいです。
などというふざけた文面を、教師の目からそっと隠し、かわいらしく微笑んでみせた。
学校内でわりと物分かりのいい、若い男の先生をがっかりさせたくはなかった。
「家に持ち帰って考えてもいいぞ」
「いいえ。ここの方が集中出来ますから」
それは心底、まったく、事実そのものだ。
家にいると、テレビがある。携帯がある。
マンガもDSもある。
つまり誘惑だらけ。
今日、学校に来る時に携帯を置いていくかどうか真剣に悩んだ…十四歳の乙女にとって携帯は体の一部ともいうべきもの。
首席というポジションをキープしているリノは、がり勉タイプではない。むしろ自宅ではだらけまくっている。
…が、学校の授業と塾では完全に勉強に集中している。
そうする事で、貴重なプライベートを満喫してきたのだ。
だが。
このうららかな、美しい春の日に、いくら教室のなかとはいえ集中することは難しく…そのうえ作文はリノの大の苦手ときていた。
頑張れよ、という一言を残し、山口先生は校庭に戻って行った。
春休みでも野球部やサッカー部は関係なく毎日学校に来ている。
野球部の顧問である山口先生はなかなか多忙のようだわ、などとまた気持ちが脱線してしまう。
「あー…やっぱり携帯くらい持ってくれば良かったかな」
気を取り直し、再びシャーペンを握った時…
リノの体に激しい衝撃が走った。
頬杖をついて、抜けるような青空を見上げながらもう一度ため息。
やんなっちゃうよ…何もかも。
肩まで伸ばした黒髪が、教室に入り込んできた春風に煽られる。
窓際に咲いている桜が、リノを慰めるように花びらを届けた。
それをそっとつまんで、フッと吹き上げる。
乙女の感傷。
自虐的な台詞を吐いて苦笑い。
今は春休み。本来なら中学校に用はない。
が、リノは来た。
それは、リノが二年生の首席であり、次期生徒会長であるからだ。
この中学では「首席」は自動的に「生徒会長」
に任命される決まりだ。
リノにとって全くいい迷惑であり、頭の痛い事でもある。
「作文できたか?」
教室の扉が唐突に開き、リノは慌てて背筋を伸ばした。
「山口先生か…びっくりしました。あのー…順調…です」
正直、新入生を迎える際に読み上げる原稿は遅々として進まない。
これから体験するであろう灰色の学園生活に、心からおめでとうといいたいです。
などというふざけた文面を、教師の目からそっと隠し、かわいらしく微笑んでみせた。
学校内でわりと物分かりのいい、若い男の先生をがっかりさせたくはなかった。
「家に持ち帰って考えてもいいぞ」
「いいえ。ここの方が集中出来ますから」
それは心底、まったく、事実そのものだ。
家にいると、テレビがある。携帯がある。
マンガもDSもある。
つまり誘惑だらけ。
今日、学校に来る時に携帯を置いていくかどうか真剣に悩んだ…十四歳の乙女にとって携帯は体の一部ともいうべきもの。
首席というポジションをキープしているリノは、がり勉タイプではない。むしろ自宅ではだらけまくっている。
…が、学校の授業と塾では完全に勉強に集中している。
そうする事で、貴重なプライベートを満喫してきたのだ。
だが。
このうららかな、美しい春の日に、いくら教室のなかとはいえ集中することは難しく…そのうえ作文はリノの大の苦手ときていた。
頑張れよ、という一言を残し、山口先生は校庭に戻って行った。
春休みでも野球部やサッカー部は関係なく毎日学校に来ている。
野球部の顧問である山口先生はなかなか多忙のようだわ、などとまた気持ちが脱線してしまう。
「あー…やっぱり携帯くらい持ってくれば良かったかな」
気を取り直し、再びシャーペンを握った時…
リノの体に激しい衝撃が走った。
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