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リミット THREE 四

[561]  ゆうこ  2008-04-02投稿

凄まじい力で、華奢な鍵は脆くも壊れた。

翠はリノの腕を掴み、教室の中央まで下がらせた
ギ…ギギ……

歯ぎしりのような、金属の擦れるような奇妙な音が、扉の向こうから聞こえてくる。
翠が、ぐっと椅子を掴み武器のように掲げる。
カラカラに張り付いた喉から、リノは無理やり空気を吐き出させた。

壊された扉は、開かなかった。
怒りから出たとしか思えない、金属的な高い唸り声が教室を震わせた。
すりガラスの向こうでうごめく影は、間違えようもなく怒りを持て余しているようだった。
腹いせのように扉を殴り付けた後、影は金属音と共に…消えていった。

翠は、殺していた息を静かに吐き出した。

「行った…?」

リノはいつの間にか握りしめ、シワだらけにしてしまった制服のスカートをぎこちなく叩いた。

「多分…何なの、あれ」
普通の人間であるはずはない、とリノは確信していた。
粟立つような鳥肌が、全身で訴えている。

化け物だ、と。

翠はようやく緊張を解き…椅子を下ろした。

とにかく、何にしても奴はここには入らなかったのだ。
そのことが、二人にとって意味のある事実だ。

胃の腑を落ち着かせたいリノは、とりあえず自分の座席に着席し…散らばった作文用紙を取り上げ…その手を止めた。

「翠」

翠は二度は呼ばせず、すぐにリノの側に来た。

「見て」

書きかけの作文を指差し…くるりと裏返した。

「これは?」

「解らない。書いたのは私じゃないって事だけは確かよ」

そこには、赤い文字で様々な言葉が書かれていた

チャイム 3 死は一

出口 逃 明 闇 きけ ん

「何だこれ?」

「…暗号?でも…大事なことだと思うわ」

窓のすぐ向こうに未だに変化なく横たわる暗黒、そして徘徊する影…。
こんな解らない状況に、この紙の意味するところは…?

リノは机に広げた紙を睨むように見つめた。
直感が、これは大事だと告げている。
呑気な日常から一瞬で
「直感」ばかりに頼る世界への転身に、戸惑ってばかりもいられない。

「意味わかるか?」

沈思黙考。

リノは目まぐるしい勢いで考えていた。
そしてふっと息を吐き、ニッコリした。

「お手上げ。でもきっと大事よ」

「そうか…そうだな」

二人は青ざめたまま、見るともなしに視線を窓へと走らせていた…。

この世界への疑問に、暗闇が答えてくれるかのように。

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