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契り(壱)

[94]  榊綾  2008-04-02投稿
あの方に初めてお逢いしたのは、女学校を卒業した十八の時です。
春爛満のあの日、吹く風も匂いたつような桜並木のもと、友人二人と可憐な花びらを愛でておりました。
赤い振り袖の早苗は賑やかでお喋りな人、だから淑やかな蓉子からすれば迷惑だったかもしれません。蓉子は逃れるように私の背後に回り、ほっとした様です。
でもしばらくして、ふんわりした風が吹く中、蓉子が私の着物の端を弱く引っ張ります。
どうかした?と尋ねると、ちょっと…と目で合図します。
彼女と同じ方を見て驚きました。そこには馬がいて、その向こうには黒い軍靴の足が見えます。私は何だか心惹かれて、じっとそちらに見とれていました。
また風が吹き、枝々が微かにぶつかって幾つもの花びらが風に巻かれてゆきます。その時、男の人が馬に跨るのが見えました。
ああ、あの感動は何だったのでしょう?深緑の軍服姿で胸を張る姿の美しいこと!軍帽で顔までは良く見えなかったけれど、精悍な感じは十分に伝わります。私の胸は苦しい位に高鳴りました。一目惚れ、きっとそれでしょう。彼も、じっと私を見ています。でも早苗が振り返った時、彼はふっと目を反らし、去って行ったのでした。
久方の
光のどけき
春の日に
しづ心なく
花の散るらむ

そんな和歌を残して…

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