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リミット THREE 五

[623]  ゆうこ  2008-04-03投稿

リノは立ち上がり、汚れた体操着姿の翠を振り返った。

「考えよう」

頭がショートするくらい様々な疑問が渦をまく。リノはもう一枚の白紙にペンで書き付けた。

1 ここはどこか
2 あの化け物はなにか
3 何故入って来なかったのか

4 紙に書かれた文字の意味は?

「こんなとこね」

翠は感心したように頷き腰を降ろした。

「ここはどこ…か」
「うん。だって、気付いてた?他に誰もいないし…外だって変でしょ?
なんか現実じゃないみたい」

「…足は平気か?」

何気なく触っていたのに気付かれてしまい、リノは慌てて手を離した。

「大丈夫よ!翠こそ私を背負ったりして平気なの…意外と重いのよ?」

「知ってる」

馬鹿!と笑ってため息をついた。

「この闇に…入ってみるか?」

「…だとしても、ここは二階よ。地面も何も見えないから、解らないけど…飛び降りるのは嫌」

「だよな…」

二人の脳裏に、あのギギギ…という唸りが巡っていた。
一階に行く、ということは…安全圏内とされる
(それさえも多分だが)この教室から出ると言うことだ。

「何故かな…」

「ああ。何であいつはここに入らなかったんだろうな…?」

それだ。
いま一番考えなきゃいけないのはそれだ。
リノはペンを紙にコツコツ叩きながら…目を閉じた。

ここと他の違いって何だろう?
もしくはあいつの知能が低すぎて、開けられなかった?
いや…あの力なら扉は壊せた…。

「…かり…」

えっと翠が聞き返す。

「明かりよ。あいつは明かりが怖いんだわ…きっとそうよ」

まさにそれが正解であるかのように、いきなりチャイムが鳴り響いた。

「チャイム?」

二人同時にスピーカーを見上げた後…

蛍光灯が点滅した。

一回……二回……

またたく蛍光灯。

「嘘…消えないで…」

消えれば、訪れる暗闇。
「リノ!」


明滅する電気を祈るように見上げ…蛍光灯は元通り輝きを取り戻した。



チャイム…



リノは汗ばむ手であの紙を握っていた。





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