想像の看守 ?―?
夜が近づくにつれ、館内は少し肌寒くなってきた。
「……そういえば、今日ルリはどうしたんだ?」
鞄の上にかけておいたブレザーを着ながら聞くと、キンはおもしろそうな顔をした。
「やっぱ気になるんだ?」
「るせ」
「ルリは――…」
しかし、キンの言葉は一瞬にして遮られた。
「ルリなら<部屋>に閉じ込めてきた」
不意にすぐ背後から聞こえた男の声。首筋の毛が、ぞわっと逆立った。
振り向く暇もなかった。
「っ!?」
乱暴にブレザーの襟をつかまれ、裕一は後ろに引き倒された。がんっと後頭部をぶつけて、裕一は「うっ!」と顔をしかめる。
逆様の世界。
自分を見下ろす顔と目が合った。
「……ふぅーん。面構えだけは、マジでアイツに似てやがる」
吐き捨てるように言ったそいつは、黒いコートに身を包み、黒髪を逆立たせていた。
キンは少し驚き、すぐにうんざりした顔になってそいつを見る。
「クロ」
クロ、と呼ばれた大柄な男は、確かに黒い瞳をしていた。裕一は目を見開いて男を凝視する。想像の看守……!!キンとルリ以外で出会う初めての看守だった。
(でも、どういうことだ?ルリを閉じ込めた……?)
裕一はすぐに聞き返そうと思ったが、威圧感のある目に押し潰され、声が出てこなかった。クロは相変わらず裕一の襟をつかんだまま離さない。二十代半ばくらいだろうか。顎の尖った、彫りの深い顔立ちをしている。眉を細くし、左耳にピアスをあけていて、いかにも都会にいそうなワル、といった風貌だ。クロは人を小バカにしたような表情を浮かべて、裕一をジロジロと観察している。
キンが珍しくイライラした様子で、二人の間に割って入った。
「いい加減にしなよ!ユーイチが迷惑してるでしょ!?」
クロはゆっくりと顔を上げると、ニッと狂暴な笑みを浮かべた。
「ユーイチ?ハァ?誰だそりゃ。こいつは、ダイダイだろ?」
そう言ってクロは空いた方の手で裕一の頭を小突いた。ただでさえ横暴な仕打ちの上にこの言葉とは、流石の裕一もカチンときた。
「……そういえば、今日ルリはどうしたんだ?」
鞄の上にかけておいたブレザーを着ながら聞くと、キンはおもしろそうな顔をした。
「やっぱ気になるんだ?」
「るせ」
「ルリは――…」
しかし、キンの言葉は一瞬にして遮られた。
「ルリなら<部屋>に閉じ込めてきた」
不意にすぐ背後から聞こえた男の声。首筋の毛が、ぞわっと逆立った。
振り向く暇もなかった。
「っ!?」
乱暴にブレザーの襟をつかまれ、裕一は後ろに引き倒された。がんっと後頭部をぶつけて、裕一は「うっ!」と顔をしかめる。
逆様の世界。
自分を見下ろす顔と目が合った。
「……ふぅーん。面構えだけは、マジでアイツに似てやがる」
吐き捨てるように言ったそいつは、黒いコートに身を包み、黒髪を逆立たせていた。
キンは少し驚き、すぐにうんざりした顔になってそいつを見る。
「クロ」
クロ、と呼ばれた大柄な男は、確かに黒い瞳をしていた。裕一は目を見開いて男を凝視する。想像の看守……!!キンとルリ以外で出会う初めての看守だった。
(でも、どういうことだ?ルリを閉じ込めた……?)
裕一はすぐに聞き返そうと思ったが、威圧感のある目に押し潰され、声が出てこなかった。クロは相変わらず裕一の襟をつかんだまま離さない。二十代半ばくらいだろうか。顎の尖った、彫りの深い顔立ちをしている。眉を細くし、左耳にピアスをあけていて、いかにも都会にいそうなワル、といった風貌だ。クロは人を小バカにしたような表情を浮かべて、裕一をジロジロと観察している。
キンが珍しくイライラした様子で、二人の間に割って入った。
「いい加減にしなよ!ユーイチが迷惑してるでしょ!?」
クロはゆっくりと顔を上げると、ニッと狂暴な笑みを浮かべた。
「ユーイチ?ハァ?誰だそりゃ。こいつは、ダイダイだろ?」
そう言ってクロは空いた方の手で裕一の頭を小突いた。ただでさえ横暴な仕打ちの上にこの言葉とは、流石の裕一もカチンときた。
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