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想像の看守 ?―?

[419]  ユウ  2008-04-08投稿
つまりダイダイは――『死んだ』、と?
裕一はどうすればいいのかわからなかった。喜んでいいのか、悲しんでいいのか。これで裕一がダイダイではないことが明らかになる。しかし――。
「……オレは、認めねぇぞ」
クロが全身を震わせながら、絞り出すような声で言った。愕然と目を見開いているが、赤みを帯びた顔から、彼の震えるほどの怒りが伝わってくる。
クロは上を向くと、美術館中に響き渡る大声で叫んだ。
「オレは認めねぇっ!!」
そして、裕一が気づいた時には、クロの姿は忽然と消えていた。
後には二人が残された。
「……ふぅ、やれやれ。短気な人は嫌だねぇ」
キンは肩をすくめると、ポツリと言った。しかし言葉とは裏腹に、その顔はつらそうに歪んでいる。
「……キン」
「ん?」
「クロは、ダイダイとどういう関係だったんだ?」
キンは揺れる瞳で裕一を見た。
「……クロは、あんな性格だから、仲間を作らない。その彼が唯一認めた男が、ダイダイだったんだ」
「……。そうか」
そんな人間なら、普段心を許さないだけに、心を許した相手には相当な思い入れがあるに違いない。裕一には、なんとなく、その気持ちがわかるような気がした。
「それに、クロはダイダイのライバルでもあったなぁ」
「ライバル?」
「ルリがらみの、ね?」
聞き返すような野暮な事はしない。なるほど、と思った。それでルリを俺に近づけないために閉じ込めるまでしたのだ。……ルリを俺に連れて行かせないために。
「さ〜てと!ボクもそろそろ帰ろっかな!」
キンは妙に空元気な様子で大きく伸びをした。
「じゃあ、また明日ね?ユーイチ」
「あっ…ちょっと待てよ」
呼び止めると、キンが怪訝そうな顔で振り返った。
「何?」
裕一はぐっと詰まった。聞きたい事が山ほどあって、何から話せばいいかわからない。裕一には想像の看守について知らない事が多すぎた。
だが変わりに口を衝いて出てきたのは、こんな言葉だった。
「……お前はダイダイと、どういう関係だったんだ?」
キンはきょとんと目を丸くした。しかし、すぐにふわりと微笑んだ。
「……大事な友達だったよ。上司と部下でもあった」
「上司と部下…?」
聞き返そうとした時には、キンの姿はなかった。裕一はまた一人で、ひっそりと静まり返った美術館に立っていた。

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