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リミット THREE 13

[566]  ゆうこ  2008-04-08投稿


翠が死んだ。


自分への想いを打ち明けて、笑って死んでいった

翠。


リノは呟いた。
体温は見る間になくなり…握ったままの手は、開かれることなくリノの手に包まれていた。
どれくらいの間、こうしていたのだろう。
戸口にいる影の叫びさえ今のリノには届かない。


翠…。


淡い光のなかで、翠の優しい、日焼けした顔が過ぎった。
無惨に引き裂かれた翠の顔ではなく、前向きに力強い翠の両目を想った。
そっと、見開かれたままの瞳を閉じさせた。


ごめん…私…行くね


リノは立ち上がり、ふっと気付いて黒板を見つめた。

それからチョークで書き付けて、もう一度翠を見遣った。

「ありがとう」


リノは椅子をにぎりしめた。

一気に扉を開け放つ。


影は…唸りながら揺れていた。
が、それだけだった。

椅子を力任せにぶつけてやる。
ギギギッッという呻き声をあげるものの、あれほどの怒りが消えたかのように大人しい。

「どういうつもり」

吐き捨てるように呟いた声にも、影はもはや興味を無くしたようだった。しばらくすると揺れていた身体を休めるように床に落とし…小さい子供のようにうずくまった。

なんなのかは解らない。けれど…。

リノは迷わず歩き始めた…玄関へと。

あの紙に書かれていたのが本当にヒントなら、出口に行けばきっと何かが起こるはず。

でなければ、私達はなんのために戦ったの?

答を捜すように、一歩一歩、出口へ向かって歩き続ける。


玄関にたどり着いた。
開け放たれていた大きなガラス扉。
ここを抜けたら…どうなるんだろう?

あと10分できっとチャイムが鳴る。
それまでにここから出なくてはいけない。

…けど。

翠がいない。
一緒に出ようと約束した翠がいない。
リノは震えている自身を抱きしめた。
…翠がいないなら…私だってここにいなきゃいけないんじゃないの?

ポケットに入れたままの紙を取り出した。

真っ暗なはずなのに、何故か書いてある文字が読める気がした。

そして、ふと ある言葉のところで…なぞっていた指を止めた。

死は一…

死。
出口からでなければ死ぬという意味なら、死 の一文字で事足りる筈だ。けれど、死は一…。

もし死は一つ、という意味ならどう?

リノの手元から、紙が滑り落ちた。

出口からでなければ死ぬ…のではなく、出口から出る為には死が一つ必要という意味なら…?

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