リミット THREE 最終章
翠の死は必然だった?
それなら、影の豹変も納得できる。
翠が死んだ、その時から影はこちらに興味を示さなくなった。
私たちのどちらかが、始めから死ぬ運命だった?
そんな…。
リノは顔を覆った。
翠…!
翠、ごめんね…!
本来なら、翠が生きていた筈なのに。
私をかばったせいで、翠は…。
でも、それなら私は行かなきゃ。
リノは唇を強く引き結びガラス扉にそっと触れた…。
翠の死を無駄にすることは、出来ない。
そんなこと、絶対にしちゃいけないのよ。
リノは両足を揃え、きっと前を見据えた。
このなにもない空間に飛び込むのは恐ろしい。
でも、やらなきゃ。
振り返ったらダメよね?…そうよね…翠。
リノは思い切り、ジャンプした。
闇との境を飛び越え、何が待つか解らない向こう側へ。
はるか彼方の頭上で、最後のチャイムの音が聞こえた気がした。
眩しい。
眩しい……
真っ白い天井。
日差しが目に入り、余りの眩しさに、瞳から涙がこぼれおちた。
リノはギュッと両目をつむり、ソロソロと開いた…頭が痛い…。
横に首を振ると、黄色い液体を入れた袋がぶら下がっていた。
点滴…病院……?
そこでリノの意識は再び遠退き、深い眠りについた。
面会謝絶が解かれたのはそれから二日後。
両親の抱き合わんばかりの狂喜が収まると、今度はお見舞いに来た人々で個室はごった返していた
そのなかで、リノは知りたかった真実を手に入れた。
大地震。
あの日。
震度六の地震に見舞われた学校は、手抜き工事が原因で二階部分が潰れてしまったのだ。
あの日、あの場所にいたのは…リノ、翠、山口の三人で…。
捜索隊は殆ど、絶望視していたらしい。
実際、リノ以外は即死だったらしく…。
「即死?」
それを知った時、リノは周りがギョッとするほどの大声をあげた。
即死だったなんて…。
ベッドに座り考え深げにしているリノに、小学生の頃からの親友である高瀬美羽は隣に腰を降ろし…ねえ、と肩を突いた。
「あ…ごめん、なに?」
「ねえ、親友の私だけには教えてくれるでしょ」
キョトン、と見返すリノにもう!と美羽は怒る。
「一階を見回ってから避難した生徒が見たって言ってたよ」
「…なにを?」
「私も好きです、リノ
って書かれた黒板…ってあれ?ち、ちょっと…なんで泣くの?」
好きだよ…翠
終
感想
感想はありません。