ワンダーゲート 2
一応、下手に出とくかな
どの辺が下手に出ているのかはともかく、美羽は校庭の隅にある石のベンチで待っていた。
リノが教室で待たないほうがいいという言葉に、合わせてやったのだ。
それにしても、憂鬱な空だなぁ…
五月という季節は、朝は晴れていたのに、放課後は雨、というはた迷惑な不安定さを持っている。
この日もまさにそのパターンの様相を呈していた…肌寒く湿気を含む空気がスカートを重たくさせる。
「おーわれ、早くぅ〜生徒会ぃ〜」
余りにも暇なので、即席「リノを待つ私」という歌を口ずさみ始めた美羽は、完全に我を忘れていた。
「リノ〜リノリノ〜早くこい〜恋したい〜私〜」
歌も佳境に入った、その時…ギョッとするほど近くで、
「ぅるさぃ」
と誰かに呟かれた。
何をっと振り返るが、誰もいない。
…?
気のせい、ということはあるまい。
あれだけノッていた歌を中断させるだけの冷たさが、あの一言にはあった…と思う。
「まあ…いっか」
だが、さすがに歌う気はしない。
腑に落ちない気分のままリノが来る予定の玄関口を振り返った。
「ぉまぇ…きこぇてぃたろぅ…」
今度こそ、それこそ頬の産毛がくすぐられる程近くで、人間のものとは思えぬ抑揚を込めた声がした。
ヒッ息を吸い込み、ハムスターがグルーミングするみたいに、ショートヘアの髪を両手で掴んだ。肌に纏わり付くような声に鳥肌が立っている。
「ちょっと…やめてよぉ…まさか幽霊とかじゃないでしょうねぇ…」
「そぅだ」
ぎゃああっと悲鳴をあげて、美羽はしゃがみこんだ。
答えるなっつーの!!
ああ…神様、仏様、イエスキリスト様…これは現実なのでしょうか?
それとも私の頭が…普通なのが取り柄の頭がとうとうおかしくなったのでしょうか?
テストの時にしかしない神頼みを呟き、いつの間にか降り出していた雨に打たれながら、美羽は自問自答していた。
「違う!おかしくなんてなってない…多分」
「じゅうぶんぉかしぃ…だがぉまぇしかぃなぃならしかたなぃ」
おい。こら。
幽霊だからって調子乗るなよ?
もしもこれが漫画なら、額に怒りのマークが出たところで、話は3へと続くのだった…。
どうする、美羽!!
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