ワンダーゲート 4
雨は降り続き、美羽とリノはじっと見つめあったまま…と、リノが笑い出した。
「歌か。歌…凄い美羽らしい!なぁんだ、心配しちゃったよ」
…苦しい言い訳の筈が、リノのツボにはまるとは…複雑。
「まあね。とにかく帰ろうよ。やっぱりなんか寒気するから、今日は寄らないでいいや」
「もー、気まぐれなんだから」
いっそこの変な「声」についてリノに助言を頼もうかと、帰り道、何度おもったことだろう。
が、結局止めた。
頭がおかしいと思われるのがオチだ。
家に入り、ローファーを脱いだ途端、声は帰ってきた。
ああ…気のせいじゃなかったわけか…。
「なんなのよ?あんたまさか引っ切りなしに話し掛けてくるわけじゃないでしょうね?」
………!……。
「え?捜して欲しいって言われても…わかったようるさいなぁ!」
「うるさいのはあんたでしょう。何を一人で喚いてるの!」
台所から母親が怒鳴る。いけない、いけない。
声に出さないで頭の中でも伝わるんだから…。
(静かにしててよ…後で話すわ…というかお風呂入る間はどっか行っててよね!)
……。
幽霊に馬鹿かと突っ込まれる事になるなんて。
昨日までの私の平穏な日常を返して欲しい…。
美羽は濡れた髪を素早くタオルで包みこみ、ため息をついた。
ようやく一息ついて、母親が入れてくれた熱々のミルクティーを自分の部屋に持ち込んだ。
机に座り、城下から聞き出した情報を書き留める…捜す捜さないは別として、「声」を黙らせるには真剣に取り組む姿勢を見せるしかないと考えたわけだ。
(ふん、隣町に住んでいたわけね?で…えーと奥さんもそこにまだいるって事か)
……。
(私と会話して、死んでから始めて学校を出られたって…え?)
地縛霊ってやつ?
うわ…特番とかで1番タチ悪いって言われてる奴じゃないの?
(俺はそんなに悪くない…ってああそう。ならいいけど)
本当のとこ、ちっとも良くない。
しかもこいつの望んでいるのは…奥さんを殺すことなのだ。
これを凶悪と言わずしてどーするのだ。
あああ。
不毛だよ……初めて部屋に入れた男が、十以上も年の離れた幽霊とはね。
乙女の苛立ちに呼応するかのように、「声」にも焦りが滲み出ていた。
不思議なことに、声はどんどん遠くなり……しばらくすると、全く収まった。
唐突に取り残された美羽は、急に脱力感を感じ、そのままベッドにダウンしてしまった……。
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