想像の看守 ?―?
あるのは部屋の真ん中に寄せられた銀色のテーブルが六つと、銀色の椅子が六脚。テーブルはこの<部屋>で勤務している想像の看守それぞれに一つずつ用意されている。他には、壁に設置された大きな本棚が五つ。どれも牢に閉じ込められた想像たちに関する資料で一杯だ。後は、インスタントココアがぎっしり詰まった箱が一つと、その上に載っている、常にお湯の沸いているポットが一つ。
以上。
「…………」
見慣れた。見慣れたはずなのだが、<部屋>を見回すと、ルリはいつも奇妙な気持ちになる。ここは何なんだろう……?少なくとも、普通の人間が暮らせるような所ではない。いや、想像の看守は確かに人間ではないのだが……。それは、牢に挟まれた真っ暗な細道を一人で巡回している時は、<部屋>が恋しくなったりする。しかし<部屋>に長時間いると、息が詰まるのも事実だった。
現在この部屋にいるのは二人。ルリとミドリだけ。
キンはユーイチに会いに行ったし、クロはその後を追ったはずだ。本当は今日、ルリも行くはずだった事を思い出せば、やはりふつふつと怒りが湧いてくる。ダイダイはもういないが、銀色のテーブルは綺麗に片付いていてそのまま残されていた。あと一人は巡回中だ。
(しまったわ…!閉じ込められたって事は、鍵はクロが持ってるってことで。このままじゃあの人、<部屋>に入れないんじゃ――)
ルリが心配になってきた頃、ガチャガチャと鍵を回すような音がした。ハッと振り向いた時、扉がバン!と勢いよく開かれた。
すっかり壁に溶け込んでいる真っ白なドアが大きく開かれていて、そこには四角く切り取られた外の暗闇。そして暗闇に紛れるようにして、塗り壁のようにクロがそそり立っていた。
「クロ……!」
ミドリが慌ててクロに駆け寄る。小さなミドリは、クロと並ぶと一層小さく見えた。さながら巨人と小人のようだ。ミドリは少し心配性で、お節介焼きの優しい女の子だが、仲間に背を向けているクロの事は特に気にかけていた。年の離れた兄妹のようにも見える。
「クロ!ユーイチに会ってきたの?」
「…………」
クロは苦虫を噛み潰したような顔のまま、何もしゃべらない。その目はミドリを通り越して地面を見つめていて、どこか虚ろだった。
何か、あったのだろうか……?
以上。
「…………」
見慣れた。見慣れたはずなのだが、<部屋>を見回すと、ルリはいつも奇妙な気持ちになる。ここは何なんだろう……?少なくとも、普通の人間が暮らせるような所ではない。いや、想像の看守は確かに人間ではないのだが……。それは、牢に挟まれた真っ暗な細道を一人で巡回している時は、<部屋>が恋しくなったりする。しかし<部屋>に長時間いると、息が詰まるのも事実だった。
現在この部屋にいるのは二人。ルリとミドリだけ。
キンはユーイチに会いに行ったし、クロはその後を追ったはずだ。本当は今日、ルリも行くはずだった事を思い出せば、やはりふつふつと怒りが湧いてくる。ダイダイはもういないが、銀色のテーブルは綺麗に片付いていてそのまま残されていた。あと一人は巡回中だ。
(しまったわ…!閉じ込められたって事は、鍵はクロが持ってるってことで。このままじゃあの人、<部屋>に入れないんじゃ――)
ルリが心配になってきた頃、ガチャガチャと鍵を回すような音がした。ハッと振り向いた時、扉がバン!と勢いよく開かれた。
すっかり壁に溶け込んでいる真っ白なドアが大きく開かれていて、そこには四角く切り取られた外の暗闇。そして暗闇に紛れるようにして、塗り壁のようにクロがそそり立っていた。
「クロ……!」
ミドリが慌ててクロに駆け寄る。小さなミドリは、クロと並ぶと一層小さく見えた。さながら巨人と小人のようだ。ミドリは少し心配性で、お節介焼きの優しい女の子だが、仲間に背を向けているクロの事は特に気にかけていた。年の離れた兄妹のようにも見える。
「クロ!ユーイチに会ってきたの?」
「…………」
クロは苦虫を噛み潰したような顔のまま、何もしゃべらない。その目はミドリを通り越して地面を見つめていて、どこか虚ろだった。
何か、あったのだろうか……?
感想
感想はありません。