ワンダーゲート5
気付けば、真夜中の1時だった。
愕然として時計とにらめっこ。
有り得ない…私が夕飯も食べずに寝ちゃうなんて
あれだけ寝たにも関わらず、身体はまだ睡眠を求め、けだるかった。
学校のマラソン大会で十キロ走らされた時さえ、ここまでぐったりしなかった。
まあ…あの時はだらだら歩いたりもしてたけど。
お腹が空いた。
人生でここまでお腹が空いたことはない、というくらいペコペコだ。
今なら炊飯器ごと食べれるな…。
よろめきながら階段をおり、布がかけられているご飯を見てネズミを見つけた猫なみの勢いで飛び掛かった。
信じがたいスピードで平らげていく…豚の生姜焼きはまたたくまに消え、白飯を四杯食べ、まだ足りない。ギラギラした目で冷蔵庫にしがみつき、今まで見向きもしなかった佃煮を山盛りかけて平らげた。
炊飯器には米一粒のこらず、文字通り皿は舐めたようにピカピカ…になってから、美羽は我にかえって呆然とした。
私、どうしちゃったの?
気付けば、手はべったり油で汚れ、顔中ぬるついていた。
途中、箸を使うのがまどろっこしく、手づかみで肉を口にほうり込んだ事を思い出した。
花もはじらう乙女が…まるで野獣じゃない!
しかし、あのただならぬ空腹感を癒すには、仕方なかったのだ。
幽霊と関係あるんかな?
そういえば、一切声がしない。
消えてくれたのかも、と美羽は切実な想いで期待をよせた。
あれは、一時的なものだったんだ。
美羽は大きな欠伸をしてベッドに戻った。
そして、3秒も経たないうちに…寝息をたてていた…。
次の日。
美羽は鏡を見て、ギョッとした。
あからさまにやつれている…。目の下に隈ができていて、唇は真っ青。
そのうえ、身体に残る倦怠感で歩くのもしんどかった。
(どうしちゃったんだろう)
とても学校までいけない…美羽は再びベッドに横になり、天井を見上げていた。
午後3時。
声が再び、頭の遠くから聞こえ始めるのと同時に雨が降り出した。
(……なるほど…ね…雨じゃないと話せない…わけ)
頭の中の声はどんどん大きく膨れ上がり、美羽は叫んだ。
「いい加減にしてよ!」
「…美羽」
気付けば、リノが立っていた。手にはノート。
お見舞いに来てくれたんだ…。
リノを見た途端、美羽はガバッと起き上がり、リノに抱き着いた。
子供のように泣きじゃくる美羽を、リノは真剣な表情で見つめ、母親のように背中をそっと叩いていた。
感想
感想はありません。