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奈央と出会えたから。<129>

[667]  麻呂  2008-04-17投稿
* * * * * *

カラーリング剤を塗布する聖人の手つきは、なかなかお手のものだった―\r



聖人はヘアクリップで何束かに分割したあたしの髪を、一束ずつ丁寧に染めてくれた―\r



『染め残しのない様にしないとな。』



聖人の吐息が、あたしの耳元に届いた―\r


ドキン―\r



あたしのドキドキが、また思い出した様に踊り出す―\r



『亜麻色の〜長い髪を〜♪』



あたしのドキドキをよそに、聖人が思い出した様に歌い出す―\r



『聖人って歌上手いよね。』



あたしの口から出た言葉が意外だったのか―\r



聖人は一瞬、目をまん丸くした―\r



『そう?でも俺、カラオケは苦手。』



あたしの髪にカラーリング剤を塗布しながら聖人は言った―\r


『え〜っ。聖人、今度一緒に行こうよ。サトル君やミズホさんも誘ってさ。』



みんなでカラオケなんて、もう暫く行ってなかったから―\r



『行ってもいいけど、俺は歌わねぇよ。』



『え〜っ。じゃあ行く意味ないじゃん!!』



あたしは、ちょっと拗ねたフリをした―\r


『俺は、やっぱバイクと車が好きだな。バイクは今は無免で乗ってるけど、18になったら大型免許取りに行くつもり。』



聖人ってば―\r



そんな話、大きな声で言える話じゃないわよ―\r



とても中学生の会話じゃないよぉ‥‥。


『聖人、大型だったら今、もう既に乗ってるじゃん。

お父さんのバイクは、ヤマハのXJRの1300?‥‥でしょ?!』



あたし、これでも本で勉強したのよ―\r



聖人の大好きなバイクと車のコト―\r



『すげぇ〜!!奈央。よく知ってんな?!』



あたしの髪を染める聖人の手が、一瞬止まった―\r



聖人は、あたしがバイクの名前を知っていた事に、よっぽどびっくりしたらしい―\r



そんなに驚かなくてもいいじゃん―\r



それって、知ってちゃオカシイってコトなのかな?!―\r



それとも、こんな事思うあたしがヒネクレ者?!



『あたしは‥‥バイクや車に興味がある訳じゃないよ‥‥。
でも、好きな人のコトをもっと知りたいって思うの‥‥おかしいかな‥‥‥。』


なんか寂しい気持ちになった―\r



あたしは、ただ‥‥聖人の好きなコトが知りたかっただけなのに―

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