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奈央と出会えたから。<133>

[837]  麻呂  2008-04-19投稿
『俺は、親父が車を運転してる所を見たコトねぇけど、当時は有名な走り屋だったってコトだろうな。』



カチャン―\r



カラーリング剤を塗り終えて―\r



聖人は、クシをあたしの横のサイドテーブルの上に置いた―\r




『お父さんの隣には、いつもお母さんが一緒だったんだね‥‥‥‥‥。』



『あぁ。いつも一緒。何をするにも一緒だったって。親父は酒に酔うと、ついつい口数が増えるから。よく俺は話し相手になってやるんだ。』



カチ―\r



そう言うと―\r



聖人は煙草に火を点け―\r



サイドテーブルの上に灰皿を置いた―\r



聖人の吐く―\r



煙草の煙が目に染みた―\r





『親父が18で、母さんが17。

この若さで結婚した事は、当時としては、すげぇ早かったそうだぜ。

“駆け落ち”同然で、二人で家を飛び出したって―。』



『“駆け落ち”?!でも‥‥愛し合っている二人にとっては、それも素敵よね。』



『ばっか‥‥。そんな甘くはなかったみたいだぜ。

その時、母さんの腹の中には既に俺が宿っていたし。』



『聖人のお母さん、17歳で聖人を産んだの?!』



『そう。さっきのフォトスタンドの中の写真の親父は、18歳で、母さんは17歳。

母さんは、俺を産んで直ぐに死んだけどな。』



溜め息混じりに、



フーッと煙草の煙を吐く聖人は―\r



またあの悲しい表情になった―\r





『親父の愛車の“ケンメリ”に乗りながら、二人は毎晩―\r

“六甲山”を走ってたそうだぜ。』



『ケンメリ?!』



『おぅ。当時、流行ったスカイラインの愛称だよ。

“ケン”と“メリー”のスカイライン。
つまり、彼と彼女のスカイラインって意味。

この車を売り出す為に、企業が男女の名前を起用してイメージ作りをしたらしいぜ。』



『ふぅん‥‥。聖人のお父さん、そんなに車が好きなのに、どうして今は、車に乗らないの?!』



その時―\r



あたしは以前、3-5の教室で、



聖人がサトル君と話していた言葉を思い出した―\r



《俺の親父が昔、車で事故ってから、二度と車には乗らねぇって、バイク党になっちまってよ―》

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