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遺書−私と彼女という現象−

[341]  あきは  2008-04-19投稿
−序−
 一先ず私は便宜上、彼女を『A』と呼んでおこう。
 私は『A』の話しをしようと思う。何故なら『A』は語る術を持たないから。だから、私が『A』のかわりに語るのだ。

 『A』は三十路を少し越えた女性だ。既婚者だが子供は夫の理不尽な理由で1度中絶して、それからは諦めたという。『A』は看護師をしていたが、今は辞めている。それについても後から話そうと思う。
 私と『A』はまるで姉妹の様に育った。『A』は少しムラッ気があるものの、真面目で部分的に神経質、その上人見知りだけど慣れれば甘えてくるという、難解なタイプの人間だと思う。

「死ぬつもりなの」
『A』は私に不意にそう言った。あまりにも当たり前の様にサラリと『A』が言った言葉は、最初意味がわからなかった。
「わたしね、死ぬつもりなのよ」
『A』はもう一度、穏やかに繰り返した。あまりの驚きに息を呑む私に『A』は、静かに笑った。
「私が生きていくための何かが砕けてしまったの。」
「何か?」
問い返す私に『A』は頷き、ふと遠い目をした。
「一番大事な何か…それが折れたの」
『A』はそれにを話したいのだろうか?私は、『A』の声に耳を傾けていた。
「わたしはね………」

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