endo・memory8
―ずっと、怖くて、寂しくて…でも、知りたかった。それは、贅沢な願いなのかな…? 「ノータイムっていうのはね。」リクはベッドに腰をかけながら真剣な顔つきで話し出した。「あらゆる物の時を喰う、化け物よ。」アクセルは化け物という響きにピクリと動く。リクは更に話し出した。 「時を喰われた者は、ノータイムとなり、それはやがて闇に集い、世界の時を喰い尽す。」話を進めるごとにリクの顔が険しくなって行く。アクセルが首をかしげた。「世界の時?」リクは元の顔に戻って言う。「知らないのね。…世界の時っていうのは、いわゆるその世界に生きる者の時そのものよ。」アクセルはまだわけがわからず、リクに質問をした。「それを喰われたら、その、世界はどうなっちゃうんだ?」リクはキッと目を吊り上げる。外の風が強いのか、窓がガタガタと音を立てた。「もちろん、過去がなければその世界は存在しない。消えるわ。」―消える…?それじゃあ、リバー・メイは… リクは微かに唇を噛み、目をふせた。「私の世界も、ノータイムに時を喰われて、消えたわ。あなたの世界も、もしかしたら―…」―消えたのかも…アクセルは下を向いた。じゃあ、俺の家も、スカイも、ユキも―… そんなアクセルを見て、リクは誤魔化すように微笑んだ。「でも、現に私達はここにいるもの。あなたの友達も、もしかしたら、ね?」アクセルはリクの言葉を聞いて、自分を慰めるように言った。「…そうだよな!スカイも、ユキも、ちゃんと、元気に…」小さくなって行くアクセルの声。リクは少し悲しそうにアクセルを見る。窓が更にガタガタと揺れた。…その時… 「!!!」 リクがハッとする。アクセルはというと、何が起こったのかわからずにいる。リクがバッと後ろを向くと、リクの後ろの宙に円形の闇が現れた。そこからリバー・メイを襲った黒い奴ら、ノータイムがはい出す。その近くからさっきと同じ円形の闇が何個も現れ、中からノータイムがはい出す。リクが銀色の不思議な拳銃を腰から取り出し、構えた。「コイツらがノータイムよ。時の無い者がのこのこと…」アクセルは目を見開いた。―コイツらは、スカイを、町を、ユキを―… ―アクセル! 笑ったユキの声が聞こえた気がした。アクセルは拳をぎりっと握り絞める。その手に、微かに光が散った。
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