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Mind Adventure 18

[460]  籬 規那  2008-04-25投稿

凄い勢いで、悪寒が妖需の全身を駆け抜けた。

「ディル……!!避けてぇっ!!」


悲鳴混じりに叫んでしまったものの、間に合うとは、到底考えられない。


だが、それは杞憂に終わった。


「浙ヤシカムメ恵藾サシサムフマ致徭忻面面椌橋難」

ディルと魔物の間に、数十個もの細かな水泡が現れ――


―――弾けた。
大きさに見合わない、最大の音量を轟かせながら弾けた水泡は、銃弾の如くに敵へと突進する。


そんな場合ではないが、面食らってしまった。妖需だけでなく、皆が。


寒気さえ覚える。

祖母は、魔法を使えなかったので、妖需はそちらの訓練は全く受けていないが、自分にも、きっと同等の力が眠っているのだ。



24年前だっただろうか――……政府が、混血狩りをしたという。


それが初めて、不条理でないように感じた。

亜人のヒトでない、残り半分は、動物よりも生態的に魔物に近いという。


人の心と、魔物の力を持ち合わせ、社会的な居場所を代償に持ち得た、過剰過ぎる身体能力。


幼いうちに処分する考えは、正しい気がする。魔物に人間が立ち向かえるのは、まさに、智恵の有無だからだ。








ジンが床を蹴る音で我にかえる。


薄い緑の被膜を帯びたディルは、ひたすら魔物を切り続けている。


あの淡い輝きは、メシアの防御魔法だろう。

しかし、ディルの無頓着な動き攻撃を受けた魔法は、綻びが目立ち、彼の体には切り傷が刻まれていた。


血痕が、渦巻きながら床を流れ、波間に赤い液体が揉まれては消える。



……切り傷…血……

ふと、昔見た魔物の生態書を思い出す。

だが、気付くのが遅すぎた。



水面に映る、数多の黒い影。

血の臭いに引き寄せられた、魔物の大群が、船をぐるりととり囲んでいた。

しかも、形状も大きさも様々な。


ジンでさえ、言葉を失い茫然としている。


(あれだけでも厄介なのに……)

馬鹿でかい、半透明の魔物に目をやる。


その視界に、赤い髪が映りこんだその時。



苦肉の策ながら、ある考えが浮かぶ。



(これに、賭ける――)


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