ひとを殺したい 3
パパが死んだのに幸せ?お前、馬鹿じゃないの?
ごめんなさい。…でもパパは、きっと私を見ていてくれるから…。それでその時、私が辛くしてたら、悲しむってママは言ってたの。
大人の戯言だね?
たわ…?なんですか?
嘘つきってことさ。死んだ奴はどこにもいやしないよ。お前のパパがお前を見守ったりもしない。
見ているもん。お兄さんが違うって言っても、私には解ります。
ガキだな。
……お兄さんはどうしてこんなことするの?
さあな。僕は毎日がつまらなくて仕方ないのさ。…だからお前を殺して暇つぶしでもと思っただけさ。
じゃあどうして助けたんですか?
助けるもんか。話終わったらお前は死ぬんだ。
……でも、お兄さん、私を助けたよ。私の首を絞めた時、私の意識がなくなる前に手を離した…
違う!ただ…気が変わったんだ。今すぐじゃなくてもいいって。
だって、お兄さんは私をゆっくり座らせてくれたよ?自分の袖で口を拭いてくれたよ?
拭かなきゃテープを貼れないだろ?
お前調子に乗るなよ、少し黙れ!!
…黙らない。だって助けて欲しいから。ママがきっと死ぬほど心配してる…助けて下さい。
うるさい!うるさい!
今すぐ黙らせてやる!
ナイフが目の前に突き出されたけど、私は動かなかったし、泣かなかった…凄く怖いけど、お兄さんに対して、腹が立っていたの。
なんなんだよ、お前…。なんで怖がらないんだ?僕が子供だから出来ないと思ってんのか?
違うよ。
こんなことで「つまらない」って思いが「楽しい気持ち」に変わると思えないから。
なんだよ、それ。
だって、私はそんなことしてもちっとも楽しくないから。
お前と僕は違う。
…そんなことない。人間だもん。
……うるさい。
お兄さんは本当は優しいんだよ。
やめろ。媚びるな。
パパ言ってた。
辛い気持ちはみんな同じだって。
嬉しくなる気持ちも。
人間は最初はみんなおんなじなんだって。
お互いの気持ちをわかってあげたら、一人ぼっちの人はいなくなるよってだから私はお兄さんのしてることが楽しいことになるなんて思えない。
お兄さんだって本当は…
やめろったら!
おしゃべりだな!
っ!!
ほら、僕には出来る。
怒りに任せて彼女の頬を切った僕は、見つめ返すのが何故か怖かった。
何故だろう?
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