ひとを殺したい 4
頬を流れていく血の感触に、私は体が麻痺したみたいだった。
痛いし、怖かった。
でも泣きたくない。何故か泣いたら、お兄さん…ううん、この子に負けるって思ったから。
だってたった一つしか違わないんだ。
おんなじ子供なんだから
痛いだろ?
痛いよ。
……でも殺されてないもん。お兄さんは、私を殺してない。
わかってる。もうちょっと後でね。
……お兄さんはどうしてつまらないの?
さあね。僕は親が嫌いだし、友達もいらない。
一人でいいんだ。
どうして?
僕は不思議だった。殺す相手に全てを打ち明けるドラマとかを馬鹿にしていたのに同じことをしようとしているなんて。
けれど、僕は話したくなっていたんだ。
どうしようもなく。
僕は感情がないのかもしれない。なにもかもが馬鹿馬鹿しく見える。
僕と同じように話せる奴はクラスにはいない。
頭の悪い奴ばっかりさ。
あのね、空き家の扉が閉まったりとじたりしているの。中にすんでいるのは誰だ?
はぁ?お前、何言って…
いいから!
わかるわけないだろ。言ってないんだから。
答えはね、誰も住んでないの。言ったじゃない。「空き家」だって。それに扉は一度も開いてないよ。しまったり、とじたり……ね?
………だから?
これね、クラスでいっつも零点ばっかり取ってる男子が教えてくれたの。でも彼、面白いよ。
彼女は、血の流れる頬を気にもしないで僕に笑いかけた。
あがいて、必死で、僕に向かってくる彼女を見ているうちに、僕は……
………お兄さん?どうして泣いてるの?
解らない。
つまらなかったの?
違うよ。
……もっと面白いの思い出してみる!あのね…
いいよ。
もういい。
え……待って、いや、来ないで……きゃああっ
ザクッ。
背後に回ったお兄さんは…私の手首の縄を切ってくれた。
僕は意気地無しだ。
結局、子供なんだ……たった一人殺すことも出来ないなんて。
…そんなの当たり前だよ……そんなことで楽しくなるわけないもん。
ならどうしたらいいんだよ?僕は…僕には毎日が辛いんだ!
辛いなら、それをママやパパに言えばいいよ。
だってママは…きっとお兄さんが大事だもん。
笑えるくらい幼くて真っすぐな彼女の言葉が、僕の最後のプライドを粉々にした。
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