endo・memory10
―闇の月、微かな光。 「何で俺がそんな事しなきゃいけないんだよ!お断りだ!」アクセルはそう言い放つとリクにそっぽを向く。リクはさっきまでの嬉しそうな顔を止め、アクセルを睨んだ。「……拒否はできないわよ!あなたがやらなければ、世界はどうなるの!?」アクセルはぴくりと動く。俺が―?リクは更に続けた。「それをできるのはあなたしかいないのよ!もう、はっきりしてよ!」だが、アクセルは考え事をしていて返事を返さない。 ―俺がやらなくちゃ、他の世界も、リバー・メイみたいに… なかなか返事を返さないアクセルを見て、リクは溜め息着いた。「はぁ……いいわ。こんなに薄情な奴、世界を救ってなんてくれないもの。」アクセルはハッとする。リクが怒っているのがよくわかった。―でも、俺にそんな重大な事できんのか?俺に―… ―パタン 扉の閉まる音がした。アクセルがそれに気付いて素早くドアの方を見る。そこにリクの姿はなかった。外にでも出て行ったのだろうか?だが、自分には関係の無い事だとアクセルはまた後ろを向く。そうだ。俺には関係無い事。だから―… けど… アクセルはドアに向き直った。「もう、あんな思いはたくさんだ…」アクセルはとっさにドアノブに手をのばした。―あんなに怖い思いは、もう嫌だ。全てが消えて行く悲しみは、もう―… ごちゃごちゃと考えている間にも、自分は走ってさっきいた所から離れて来ている。戻れる自信は、はっきり言ってない。リクを見つけてさっきの誤解を解かなくてはいけない。嫌な奴だと思われ続けるのはやっぱり嫌なのだ。大急ぎで暗い路地を走るアクセルを、ビルの上から小さい一人の人影が見ていた。 「………。」黒いマントで顔も隠した人影が、スッと消えた。
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