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奈央と出会えたから。<137>

[606]  麻呂  2008-04-29投稿
『でも、どうして移り住んだ街が、小樽なのか‥‥。そこは、俺にもよく分からないんだ。

多分、親父は母さんが亡くなった日の事を、早く忘れたかったのだろうけど、

全てを忘れてしまうのが怖かったんだろ。


だから、神戸の街に、どこか雰囲気が似ている‥‥小樽の街を選んだのだと―\r
俺は、そう思ってる‥‥‥。』



『聖人は神戸で生まれたけど、赤ちゃんの時に直ぐ、小樽に来たから、神戸での記憶は、全く無いんだよね?』



『ああ。そうだよ。だから、俺が知ってる神戸は――

こうやって、古いアルバムを捲ってる時と、親父の晩酌時の話相手になってやってる時に、頭の中で思い描く、“想像の中の街”でしかないんだ。』



聖人は、あたしの頭をポンッと優しく叩いて、ニッコリ微笑み―\r



古いアルバムを閉じた―\r





『今日は、朝から学校サボったから、まだ昼前じゃん。

おっ、そういや奈央。お前、学校初サボリだな。』



『う、うん。』





そうだった―\r





あたしは、今日―\r





生まれて初めて学校をサボったんだった。





『腹減ってねぇか?!俺、何か作ってやるよ。』



『えっ?!聖人。いいよ。あたし、別にお腹減ってないし‥‥‥って言うか、あたしが何か作ろうか?!』



料理は得意ではないけれど―\r



いつも、お母さんと一週間交代で夕飯の支度をしているから、



簡単な物なら作ってあげられると思ったんだ。





『ば〜か。奈央。俺に変な物でも食わされるとでも思ってんだろ?!家は俺と親父しかいねぇからさ、俺か親父が作るしかないじゃん?!

親父は、溶接の仕事してんだけど、帰りもなかなか遅いしさ、

だから、いつも簡単な物を適当に作って食ってんだ。』



『凄いね聖人。自分で作ったりするんだ‥‥‥。』



あたしは正直驚いた。



聖人って案外、器用なんだ。





『待ってろ。今、俺特製チャーハン作ってやるよ。』



聖人は、そう言うと―\r



手早く玉葱の皮を剥き―\r



それを、物凄い早さでみじん切りにした―

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