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失われた記憶?

[332]  七瀬凪  2006-05-06投稿
「…あ、悪魔…。」

疑問と言うよりは、確認するかのように呟いた。

「いかにも。俺様はいわゆる悪魔と言われるものだ。
名前はアイス。
まぁ、でも、覚えることはないよ。
アンタ、一年後死ぬんだし。」

「…?!」

あまりに、突然のことにあまりよく事情がのみこめなかった。
そんな僕をよそに、悪魔はほくそ笑む。

「まぁ、正確には、一年後に死ぬのは俺様と取引きをした場合だけだけど。」

そして、悪魔は続けて言った。

「ちなみに今のは、条件のひとつでもある。
俺様と取引きしたら、この女は目を覚ます。
だが、同時に記憶を無くす。
つまり、自分の名前も、アンタのこともわからなくなる。
どんなに頑張っても、記憶は戻らな。
記憶を無くす前、この女がアンタのことが好きだったとしても、記憶を無くしたこの女は二度とアンタを好きにならない。永遠に。
たとえ、記憶が戻ったとしても、それは同じ。
まぁ、一年後に記憶が戻るんだけどな。
つまり、アンタが死んだ時だ。」

悪魔は、ニヤニヤとしながら、楽しそうに言った。

「…構いません。
それで彼女が助かるなら…。」

僕は、覚悟を決め、言った。
ずっと、彼女が目を覚まさないよりはマシだ。
…それにどうせ、彼女は僕のことなど好きじゃないし…。

「ほう…。けっこう、結構。
ならば、契約成立だな。
よし、契約の証に、アンタの血をもらう。
右手を出しな。」

そう言って、僕がおそる、おそる差し出した右手にナイフのようなもので切ると、同じように自分の手を切り、傷口を合わせた。

「…よし、完了だ。
それじゃぁ、一年後。
丘崎 歩(おかざき あゆむ)くん。」

そう言って、にやっと笑うと、悪魔は消えた。
それにしてもなぜ、名前を知ってたんだろう…。
だが、僕が、その答えを知る日は二度とやってこないだろう…。

感想

  • 838: いい?? [2011-01-16]

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